害虫駆除大戦〜バレンタイン編〜 |
「いい匂いだね。何を作ってるの?」 「ふふっ!バレンタインですから、チョコレートケーキを作っているのですわ」 ほら、とラクスはペースト状になったチョコレートが入っているボールをキラに見せる。 キラはへぇ・・・と興味深げにラクスの手元を覗く。 確かにボールの中には艶やかなダークブラウンのクリームが入っている。 「子ども達が喜びそうだね」 「はいvですので、全員分を作っていますのよ」 「僕にも何か手伝えることってあるかな?」 「そうですわね・・・・・・それではテーブルのセッティングをお願いできますか?後は飾り付けるだけですし、そう時間は掛かりませんわ」 「そう、わかったよ。子ども達も呼んでこようか?」 「えぇ、お願いしますわ」 了解、それじゃあ準備してくるね。とキラは笑いながらキッチンを後にした。 ラクスもそれを見送ると、楽しげに微笑みつつ最後の仕上げに取り掛かった。 テーブルの飾りつけが終わったキラは、外で遊んでいる子ども達に声を掛けるべく、海沿いにある花畑へとやって来ていた。 「キィラ〜!」 やって来たキラに気がついた子ども達が元気よく駆け寄ってくる。 走ってくる勢いのまま半ばタックルするように、キラの体に飛びつく。 キラはその勢いに押されないように踏ん張りながらも、しっかりとその体を受けとめる。 「ラクスがケーキを焼いたから、おやつの時間にしようって。それで呼びに来たんだ」 「ケーキ!食べる食べるぅ〜!!」 「うん、じゃあ皆家に戻ろうか」 「うん!!」 「早く帰ろ〜!」 ケーキという言葉に、子ども達は目を輝かせる。 善は急げと言わんばかりに、家に向かって元気よく駆け出す。 が、駆け出したのは男の子達で、女の子達はその場に残っている。その中の一人がキラへと近寄ってきた。 「キラ!これあげる!!」 そう言って差し出してきたのは、摘んだであろう花々でできた小ぶりの花束。 「みんなでつんだの!」 「キラにあげる〜!」 「いっしょうけんめいつんだんだよ?」 代表で花束を差し出す女の子の周りにいる女の子達も口々にそう言う。 キラはそんな子ども達を微笑ましげに見ながら、差し出された手製の花束へと手を差し伸べた。が、次の瞬間―――― 『キィ〜ラァ〜〜!!』 随分と間延びした声と共に、ゴオォッ!!と突風が巻き起こった。 キラリ☆と太陽光を反射しながら、やけに見慣れた紅が姿を現した。 その紅は段々と近づいてきて、キラ達から少しだけ離れたところにその足を地に着ける。 しかし、お世辞にも十分な距離とは言えず、キラと子ども達は着陸の際に生じた風をもろに浴びた。 「―――あっ!」 突風に耐えかねた女の子の手から、花々が散り散りに飛び散っていく。 女の子の手から離れた花は、巻き起こった風と共に蒼天へと高く舞い上がる。 呆然とした女の子の手には一輪の花しか残されなかった。 「お花・・・・・とんでっちゃった・・・・」 花々が消えていった空と手元に残った一輪の花を見比べて、衝撃で目を大きく見開きながら女の子は呆然とした様子で呟いた。 しかし次の瞬間には、とても悲しげにその大きな瞳を潤めた。 そんな女の子の様子を見ていたキラは、その米神に血管を浮き立たせた。 もちろん女の子に対してではない、女の子が悲しげな表情をとる原因となった非常識野郎に対してだ。 そしてその非常識野郎は紅から飛び出し、満面の笑みにハートマークを振り撒きながら(キモイ!)両手を広げてこっちへと駆け寄ってくる。 「キィ〜ラァァ〜〜〜vV」 「アスラン・・・・・・」 そう、駆け寄ってくる非常識野郎とはキラの幼馴染兼親友(のはず)のアスラン・ザラであった。 上機嫌で駆け寄ってくるデコに、キラはこれでもかっ!というほど綺麗な笑みを浮かべて待ち構える。 二人の距離が後数歩というところまでデコもといアスランが来たところで、キラは綺麗な笑顔を維持したまま、そのニヤケ面に容赦無く拳を叩き込んだ。 予告なしに殴り飛ばされたアスランは、そのまま花畑へとベショッ!と顔面から突っ込んだ。 「痛い・・・・・・いきなり何するんだ、キラ!」 「いきなり何するんだ、はこっちのセリフだよアスラン。どういうつもり?いきなりインフィニットジャスティスでやって来るなんてさ。おかげでこの子達が摘んでくれた花がみんな飛んでいっちゃったじゃないか」 「何を言ってるんだ、キラ!今日は男にとって一大イベントの日じゃないか!!バレンタインだぞっ、バレンタイン!!!!!」 「ちょっと、人の話聞いてる?『つーか、テメェこそ何言ってやがるんだ?』ってちょっぴり思っちゃったんだけどな、僕」 小首を傾げつつ、心の声を暴露しているキラ。心なしかさっきよりもくっきりと米神の血管が浮き上がっているような気がする。 しかし 「ほら、やっぱり普段はあんまり会えないけど、こういう日こそはきっぱりと意志表現してもらいたいものだろ?」 「いや、意味わかんないし」 「だから、好きな相手から贈り物がもらえるって嬉しいだろ?」 「ふ〜ん、そう。だから?」 「ふぅ。ここまで言ってもわからないかなぁ・・・・・・」 「(わかんねぇーよ!)」 やたらと遠まわしにものを言うでこっぱちに、キラのイライラは積もっていくばかりだ。 しかたないなぁ〜と首を軽く振った後、アスランは爽やかに笑んでこう言った。 「キラは俺にチョコ用意してくれてるんだろ?」 「おととい来やがれV」 さぁ、寄越すんだ!と言わんばかりに差し出されたアスランの手を、キラは超イイ笑顔を浮かべながら光速で叩き落とした。 自分へチョコを用意していると断言するデコピカの鳩尾に、キラは一切の躊躇もなく蹴りを入れた。 てか、なんでセリフが断言形なんだよ! 「どうしたんだ?キラ。さぁ、恥ずかしがらずに!!」 「言ってる意味わかんないし。大体僕は男なんだよ?どうして男が男にチョコをやらないといけないのさ?」 「そうか、キラは恥ずかしがりやさんだもんな。用意してないのか・・・・」 「一体どこをどう解釈すればそんな酷く歪んだ解釈ができるの?ざけんじゃねーぞ?」 段々と口が悪くなっていくキラ。 彼の背後には黒き靄が渦巻いている。 しかしそんなもの、デコの目には映っちゃあいない。つか、入る余地が無い? 「仕方ないなぁ・・・・・。それじゃあ、俺が代わりにプレゼントするよ」 「うわぁ、いらねー。というか断固拒否?」 「もぅ、照れ屋なんだからキラは」 だから、どこをどうすればそういった解釈になるんだ? 「頭大丈夫?一体どうすればそんな自分の好きなように意味を取れるかな・・・・・・。妄想甚だしい」 「もちろん大丈夫さ。俺はちゃあんと理解してるから!愛してるよ、キ・ラV」 「うわっ!めちゃめちゃ鳥肌たった!?さぶっ!キモッ!というか一生口開くな!!」 「是非とも俺の愛を受け取ってくれ!」 そう言ってアスランが差し出したものは、どう曲がった方向から見ても指輪だった。 しかもさり気なくアスラン自身の薬指には同デザインの指輪がしっかりとはめられている。 「いや、いらないし。重いし。むしろ痛い?」 「そんなに嬉しがることないだろ?」 「どこを見てそうなるっ?!」 いや〜!たすけて〜!ラ〜ク〜スゥ〜!! 「呼びましたか?キラ」 キラが内心心の底から悲鳴を上げた瞬間、目の前にピンク色が広がった。 と、次の瞬間にはデコが勢いよく吹っ飛ばされていた。 「大丈夫でしたか?キラ。妄想癖持ちデコリンから何かされませんでしたか?」 「だ、大丈夫だよ、ラクス・・・・・。ただ、ちょっと指輪持ってにじり寄られたけど・・・・・」 「まぁっ!身の程知らずな!!私のキラになんという不埒な真似をしくさってくださったのですか、デコラン!!」 「誰が貴女のですか!大体何ですかデコランって、無理矢理改名するにも程があります!!」 「別に無理矢理でも何でもありませんわ!デコにデコって言って何がいけないんですの?害虫は即刻駆除するに限りますわ!やってしまいないさい!!ピンクちゃん!!!」 『ハロッ!ハロッ!イッテカマシタロカー!!!』 「うぎゃああああぁぁぁぁぁっ!!!!」 瞬殺。 所詮害虫は女帝の前ではザコキャラに等しいのだった。 「もう安心ですわ、キラ。キモデコは跡形も無く排除しましたから」 「ありがとう、ラクス・・・・・。僕だったら対処しきれなかったよ」 「気にしないでくださいませ。さぁ皆さん、早くお家に帰ってケーキを食べましょう」 涙ぐむ子ども達を宥めつつ、キラ達は何事も無かったようにその場を去って行ったのだった。 後に残されたのはキラリと輝く銀の指輪、ただ一つであった―――――――。 ※言い訳 はい、バレンタイン企画第三弾!14日はとうに過ぎてしまっていてゴメンナサイ!! このお話の時間軸は戦後でラクスとか普通にオーブに戻っていたりします。色々思うところはあるでしょうが、どうか突っ込まないでください!! さて、今回の仮定設定は「アスランのキャラがキモかったら」です。アスランファンの方、本当に申し訳ないです;;アスラン、別に嫌いではないんですよ?(焦) 今回、限りなく黒のキラと女帝なラクス様のタッグで行きました。もう最強? こんなどうしようもなくふざけたお話ですけど、心の広い方は貰ってやって下さい。 2007/2/16 |