働く人達に労わりと感謝を














「なぁ、アレン・・・・・・・」

「はい、何ですか?ラビ」

「・・・・・・コレ、一体どうしたんさ?」


そう言ってラビが指差した先には、デデーン!とふんだんにデコレーションされた特大のケーキが鎮座していた。
しかもその数は一つや二つではない。
見かけから種類まで、多種に渡る大量のケーキ達が見たくなくても視界に入ってくる。
ラビは甘いものは嫌いではないが、それでもこの光景を見ると胸焼け感が溢れてくる。

頬を引き攣らせるラビとは対称的に、リナリーはその色とりどりのケーキ達を見て感嘆の声を上げる。


「すごい数のケーキね。アレンくん、こんなに沢山のケーキどうしたの?」

「いや〜、自分で作るのなんて久々だったので作るのに夢中になってしまって・・・・はりきりすぎちゃいましたね」

「はっ?!これ、全部アレンが作ったんさ??」

「すごーい、アレンくん!そこら辺のお店で売ってても、全然違和感が無いと思うよ?」

「いやだな〜リナリー、煽てても何も出ませんよ?でも、お世辞でも嬉しいです」


((いや、お世辞じゃないです))


ラビ達がそう内心できっぱりと言えるほど、目の前で行列を成しているケーキ達の出来映えは素晴らしかった。


「そうよ、アレンちゃ〜ん!もう、私もホレボレしちゃうくらいにいい出来映えよ、そのケーキ。エクソシストなんてやめちゃって、うちの専属のパティシエにならない?」


と、ジェリーに言わしめるほどだ、その腕前はプロ並みと言えよう。


「お〜、すごいケーキだな。これどうしたんだ?」


そう言ってやって来たのはリーバー。
片手にコーヒーが注がれたマグカップを持っているところを見ると、今は一息ついているところの様だ。


「リーバーさん!丁度よかった、このケーキの消費を手伝ってくれませんか?流石の僕でもこんなに大量のケーキは胃に収まりませんし・・・・・そもそも皆さんに食べてもらうつもりで作ったものですから」

「いや、寧ろこれ全部入ったら逆に怖いって;;・・・・って、作った?これをお前がか?」

「はい、頑張って作ってみました」

「どっちかっつーと頑張りすぎな気がしないでもないがな・・・・・・。うーん、どうせなら室長達も呼んでこようか?今丁度よく皆休憩取ってるから」

「本当ですか?助かります」

「いいって、ご相伴に預かるわけだからこれくらいのことしてやるよ」


そう言うとリーバーはさっさとコムイ達を呼びに行った。
数分後、コムイを筆頭に科学班の面々がやって来た。


「うわっ!本当にすごい数のケーキですねぇ〜」

「すげー・・・・・」

「ん〜、これは壮観だね。これアレンくんが作ったって本当かい?」

「コムイさん。はい、そうですよ?ジェリーさんにお願いして厨房を貸してもらって作ったんですよ」


ケーキを切り分けながら、アレンはコムイの質問に答える。
切り分けたケーキを形が崩れないように注意しながら皿に盛り付け、それを一人一人に渡していく。


「アレン、これ本当に食べられるんさ?」

「失礼ですね。人様が食べれないようなものを僕は作りませんよ」


手渡されたケーキを不審気に見るラビに、アレンは不機嫌そうに言い返す。
そう言われたからにはちゃっと食べれるのだろうと判断(酷っ!)し、ラビは怖々とそのケーキにフォークを突き立てた。そしてぱくりとフルーツが綺麗に盛り付けられたタルトを口に入れた。


「・・・・・美味しい」

「本当!見かけも綺麗だけど、味もとっても美味しいよ!アレンくん!!」

「マジにうめぇ・・・・・」

「ほんと、美味しいです!!」

「へぇ、甘さの加減も丁度いいね。うん、美味しいよ。アレンくんは食べる側のイメージが強いけど、これを見るとそうも言えなくなるね」


がっつくように食べる科学班の面々。コムイも満更でもなさそうにベイクドチーズケーキを口に運んでいる。


「ところでアレンくん、どうして急にケーキを作ろうと思ったの?」

「それは・・・・日ごろお世話になっているから、そのお礼です」

「ふ〜ん、あとは?」

「え?」

「理由、それだけじゃないでしょ?」


紅茶のシフォンケーキを口に運びながら、リナリーは僅かながらに高い位置にあるアレンの眼を覗く。
確信を持ったように言い切るリナリーにアレンは目を丸くして驚きつつも、降参とばかりに息を吐いた。
そして賑やかにケーキを食べているコムイ達に視線を向ける。


「お礼というのも嘘ではないですよ?ただ、何だか最近お疲れのようでしたから息抜きになればと思ったんです」


それに、疲れたときには糖分を摂った方がいいですからね。

最近、科学班は何か新手の情報が入ってきたのか、データ収集に解析など目まぐるしく動き回っていたのだ。
ほとんど不眠不休で馬車馬の如く働き回っていた彼らは、酷く疲れた雰囲気を醸し出している。
昨日あたりからその忙しさも沈静化してきているようだったので、労わりも込めてケーキの差し入れでもしようかとアレンは考え付いたのであった。
まぁ、はりきってケーキを作りすぎたのは予定外であったが・・・・。


「ふふっ!ありがとうね」

「?何でリナリーがお礼を言うんですか?」

「だって兄さん達のことを気遣ってくれたんでしょ?だから、ありがとう」

「いえ、僕が勝手にしたことですから・・・・・・」

「くすっ!じゃあ、そういうことにしておくわ」

「是非ともそうしてください」


リナリーにお礼を言われたアレンは少し照れたように視線を泳がせ、あらぬ方向を見る。
そんなアレンの様子を見て、リナリーは楽しげに笑った。









そうして二人は、美味しそうにケーキにぱくついている科学班の面々(+α)へと労いの意味を込めて視線を向けるのであった――――――――。














※言い訳
バレンタイン企画小説第二弾。今回はDグレです。
さて、今回のIFテーマは「アレンの料理の腕前がかなり良かったら?」です。この企画、いつからIF設定で書こうって話になってるんだろ?・・・今か
ジェリーさんの言葉遣いがよくわかりません(爆)。なんか変じゃねぇ?って思っても見逃してください!本当はカンダも出したかったんだけどな・・・・・・出すタイミングが見出せませんでした;;
こんな話で良ければ、どうぞお持ち帰りください。

2007/2/14