★クロスネタ2★少年陰陽師×ポケットモンスター

【story2】




ポケットモンスター。

縮めてポケモン。


沢山の謎を秘めた生き物で、人間と共に暮らしているものもいれば、草むらや洞窟、海や川などに生息しているものもいる。
その生態については、まだわかっていないことが多い。





「――・・・で、このモンスターボールを使うと捕まえることができ、中に入れて持ち運びができることが最大の特徴かな?」

「へぇー・・・」


昌浩と物の怪はオダマキと名乗る男が手に持って見せている、赤と白色の球体を関心した面持ちでまじまじと眺める。
あんな小さな球体に、明らかに質量を上回っている生き物を入れることができるらしい。そんなありえないの一言に尽きる現象も、実際にオダマキがポケモンを出し入れする様を見せられては無理矢理にでも納得する他ない。

現在、昌浩達はオダマキが住んでいるオダマキ研究所にてこの世界のこと――昌浩達が住んでいる世界と最たる違いであるポケモンについて話を聞いている。
何故自分たちの住んでいる世界とは別物であると言えるのか。それは偏にポケモンという生き物の存在による。
まぁ、ポケモンという存在がいるというだけでは確固たる証拠にはならないが、この世界に犬や猫といった昌浩達の世界では当たり前の生き物が存在しないという話を聞いて、漸く自分たちがいる世界とは別の世界にやって来てしまったのだということに気づいたのであった。
そしてその旨をオダマキに伝えたのだ。

もちろん、そんな荒唐無稽な話(自分でもそう思う)を聞かされたオダマキは驚いていたようだが、昌浩たちがポケモンの存在を知らないことから信じてくれたらしい。(そしてその判断材料に足るほどに、ポケモンという存在はこの世界に溢れていることがわかった)


「・・・・それでポケモンはこのホウエン地方とカントー地方を合わせて380種類以上も確認されているんだが、それ以外の地方でも新しいポケモンが確認されているから、実際はもっと多くいると考えて間違いないだろうね」

「そ、そんなに沢山いるんですか?」

「もちろんだとも!彼らは私たちの周りにだけではなく、自然のあらゆる所に生きている。その全てを確認できるかというと難しいだろうね。私もポケモン研究家の内の一人だが、彼らのことを知れば知るほど、その不思議は深く、果てしないことがわかる。」

「好きなんですね、ポケモンのことが・・・・・」


生気に満ち溢れてポケモンのことを語るのが楽しくって仕様がないというオダマキの顔を見れば、自然とそのような言葉が出てきた。
そんな昌浩の言葉に、オダマキは大きく頷いて返した。


「あぁ、好きだとも。私は特に自然の中で自然を感じながらポケモンを観察するのが好きでね、一緒に転がってみたりもするのだよ」


まぁ、その行いは傍から見れば怪しいことこの上ないのであるが・・・・。

そうしてポケモン講座を行っているうちに、どうすれば昌浩達は元の世界に戻ることができるのかという話になった。


「う〜ん、難しい話だねぇ。君たちはどうやってこちらに来たのかわからないんだよね?」

「はい・・・。視界が白くなって、気がついた時にはもうこちらに来てましたから」

「で、取り敢えず散策してみようということになって、しばらくしたらポケモンとやらに襲われているあんたに遭ったというわけだ」

「はははっ、その節は大変お世話になりました;;」


物の怪の言葉に、オダマキは乾いた笑いを漏らして後ろ頭を手で掻いた。
しかし、そんなオダマキの仕草などどうでもいいと言わんばかりに、物の怪はせっつく様に言葉を紡いだ。


「・・・・で、俺たちが元の世界に戻れる方法などに心当たりは全くないのか?」

「う〜ん、と言ってもだねぇ。そんな空間どころか時間まで越えることができる手段なんて・・・・・・・・・・!ああっ!一つだけ、思いついた!!」

「何っ!それは本当か?!」


ぱしん!と手を打ち合わせたオダマキに、物の怪が勢い良く詰め寄る。
そんな物の怪にオダマキは仰け反りながらも、首を縦に振った。


「あ、あぁ・・・・ただ、心当たりがあるだけで、確証があるわけじゃないんだけど・・・・・」


そう前置きをしたオダマキは、元の世界に帰ることができる可能性の一つとして、ある一匹のポケモンについて話し出した。
そのポケモンの名前はセレビィと言って、時渡りという時空を越える特殊な能力を持っているポケモンなのだそうだ。そのポケモンの力なら、もしかしたら元の世界に戻ることができるかもしれないとのこと。


「――とまぁ、絶対とは言い切れない方法なのだけれど、どうだい?」

「それでもいいです。どのみち俺たちはその帰る方法が思いつかなかったんですから、少しでも望みがあるのなら、それに賭けてみようかと思います」


彼自身が悪いわけではないのだが、ひどく申し訳なさそうな顔をするオダマキに、昌浩は大きく頷いて返した。
それしか元の世界に帰ることができる可能性がないのなら、その可能性に賭けてみるしかないのだ。例えどれくらい可能性が低かったのだとしても・・・・・。


「話はわかった。で、そのセレビィというポケモンとやらはどこにいるんだ?」

「わからない」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」


わからないときっぱりそう告げるオダマキに、思わず沈黙が流れた。


「・・・・・・おい、わからないとは一体どういうことだ?」

「ちょ、そんなに怒らないでくれ!そもそもセレビィについてはまだわかっていることが多くない、珍しい種なんだ。だから生息地についてもはっきりとしたことがわかっていなくって・・・・数少ない報告からその外見や能力を知ることはできているんだが・・・・・」

「つまり、そのセレビィとやらは貴重種で、その生態などはまだはっきりしていない。だからわからないと、そういうことなんだな?」

「そ、そのとおりだ!」


怒気も露な物の怪に冷や汗を大量に流しつつ、じりじりと後ろに下がってその距離を置こうとする。
しかし、そんなオダマキに救いの手が差し伸べられる。


「もぅ、もっくんやめなよね。オダマキさんに八つ当たりしても状況は変わらないだろ?」

「む・・・それはそうだが・・・・」

「すみません、オダマキさん。話を続けてください」

「あ、あぁ・・・・。だからセレビィの生息地が森であるということしかわかってないんだ・・・だからセレビィに合おうとするならば・・・・・・」

「森の中を探すしかないと・・・・?」


何とも気の長い話だ。
思わず遠くに視線を馳せる昌浩に、オダマキは慌てたように言葉を重ねる。


「だ、だが!セレビィの存在を確認報告はされているんだ、その確認されたという場所を当たってみるのが一番だと私は思う」

「・・・まぁ、妥当な線だな。もしかしたら何かしらの手がかりが掴めるかもしれないしな」


物の怪はオダマキの言葉に納得したように頷く。


「あぁ・・・。ただ、私はその場所をよくは知らないんだ。だから知り合いに当たって聞いてみるしかないのだが・・・・」

「って、知らないのかよ。本当に使えないな・・・・」

「もっくん!・・・・それで、知り合いの方に確認を取るとなるとやはり時間もかかりますよね?一体どれくらいかかるんでしょうか・・・・」

「そうだね、私も相手もそう暇な身ではないからね、それぞれの都合もあるだろうし、直ぐにとは難しいだろうね」

「そうですよね・・・・・」


オダマキとて己の仕事があるのだ、まさか見ず知らずの赤の他人である自分たちにばかり時間を割くわけにはいかないだろう。そして割いてくれとも言えるわけがない。
そもそも、この異界の地でどうやって生きていこうかという初歩的な問題だってある。
そのことについてぽつりと呟きを漏らすと、オダマキがいいことを思いついたと言わんばかりに顔を輝かせた。


「そうだ、マサヒロくん。君、この世界を旅してみないかい?」


それは唐突な申し出であった。


「え・・・旅、ですか?」

「そう、旅。君たちの世界にはポケモンがいないのだろう?旅をして、そういうのを見て回るというのも悪い話ではないと思うのだけれど」


昌浩はオダマキの申し出について考えてみる。
確かに、自分たちはこの世界についてよく知らない。それを知るために各地を旅して回るというのも悪くはないのかもしれない。どのみちセレビィというポケモンを探すために旅立たなければいけないのだろう。そのことを考えればオダマキの申し出は至極当然のようにさえ思えてきた。


「そうですね・・・旅をしてみるのも悪くはないと思います」

「そうか!それなら早速旅の準備を・・・・・」

「あ!でも、俺たちお金とか全然持っていないんですけど・・・・」


そう、何せ昌浩達は別の世界からやって来たのだ、この世界の通貨を持っているはずもない。
その旨をオダマキに伝えると、彼は破願して手を振った。


「あ、それなら大丈夫。ポケモントレナーとして旅をすれば、無料で宿泊したり食事をすることができる場所があるから」

「え・・・そんな場所があるんですか?」

「もちろんあるとも。何せここでは10歳からポケモントレーナーとして旅立つ子が多くいるんだ、そういった子たちを支援するためにも、各街にあるポケモンセンターなんかは無料で利用できるようになってるんだ」


でないと子どもなんかを安心して旅させることなんてできないだろう?あ、でもやっぱり旅だからそれなりの危険だってあるけどね。

そう話すオダマキに、昌浩たちは成る程と頷く。


「わかってもらえたかな?それじゃあ、早速準備に取り掛かるとしよう。細かな説明は準備をしながらするとしようか」

「はい・・・よろしくお願いします」


オダマキの言葉に漸く肩の力を抜くことができた昌浩は、こくりと頷くと準備に取り掛かるオダマキの後を追うのであった―――――。







                        *    *    *







「―――まぁ、こんな感じかな?数日分の食料や毛布とか細々した道具は全部このカバンの中に入れておいたからね。少ないけど、必要になるかもしれないからお金の方も入れておいたよ」

「すみません、何から何まで全部揃えていただいて・・・・・しかも服まで」


そう言って昌浩は自分を・・・正確には自分が見に纏っている服を見下ろす。
昌浩が現在着ている服は狩衣ではない。流石に狩衣ではこの世界では目立ってしまうので、オダマキが助手に頼んでこちらの服を用意してくれたのだ。
昌浩が身に纏っている服はベージュ色のタートルネックのカットーソーの上に、膝丈まである黒の袖なしのコート、黒のアームウォーマー、カーキ色のアーミーパンツ、そしてコンバットブーツで足元は固められている。そして頭にはモンスターボールの柄が描かれているベージュのニット帽を被っている。
どこからどう見ても、今の昌浩ならこの世界に住んでいる人たちと何ら変わらずに見える。

実際にこちらの服を着てみての昌浩の感想。やっぱり思ったとおり動きやすいな〜、である。
コンバットブーツは堅いイメージがあるが、日ごろから堅い沓を履いている昌浩からしてみれば、むしろ柔らかいぐらいに感じられ、しかもこちらの方が一体感があるので寧ろ動き易いくらいであった。


「いやいや、気にすることはないよ。困ったときはお互い様ってね、もし私が頼みごとがあったときにはお願いすることもあるかもしれないけど、いいかな?」

「それはもちろん引き受けさせてもらいますが・・・・本当にいいんですか?これ」

「いいよ、いいよ。・・・あぁ、あとこれを君に渡しておこう」


そういってオダマキは手に乗るくらいの大きさの四角い機械――ポケモン図鑑を昌浩に手渡した。


「これは・・・・?」

「これはポケモン図鑑といって、捕まえたポケモンやこの図鑑を向けたポケモンのデータを表示してくれる便利な機械さ」

「へぇ〜」

「そしてこれがポケナビ。連絡先に私の所を登録しておいたから、何かあった時はこれで連絡してほしい。もちろん、特に用がなくても遠慮なく連絡してくれると嬉しいよ。セレビィについて何かわかったら、直ぐにこれに連絡するからね」

「はい!ありがとうございます!!」

「それで機械の操作方法についての説明に入るけど・・・・・・・」


それからしばらくはポケモン図鑑やポケナビの操作方法について、昌浩はオダマキからレクチャーを受けた。
昌浩と物の怪は、真新しいそれに興味深げに話を聞いていた。


「――というわけなのだが、大体わかってもらえたかな?」

「えぇ、この機械についての仕組みは大体わかりました。後は実際に使ってみて慣れるだけですね」


昌浩はオダマキの言葉に頷くと、それらを丁寧にコートのポケットへと仕舞い込んだ。
それを見届けたオダマキは、改めて口を開いた。


「さて、これで漸く旅の準備は整ったね。旅に出た後はポケモントレーナーとしてジム戦に参加してみるのも良し、ポケモンコーディネーターとして各地で行われているコンテストに参加するのも良し。君がやってみたいと思ったことをするといい。・・・まぁ、そのためには手持ちのポケモンを増やす必要もあるけどね」

「はぁ・・・・。そこのところはまだ決めかねているので、旅をしながらゆっくりと考えたいと思います」

「うん、その方が良いだろうね。きっと己ずと自分のやりたい事が見えてくるさ」


昌浩の意見に賛同するように頷いたオダマキは、そうだ!と突然叫び声を上げたかと思うと、部屋の奥へと引っ込んでしまった。
一体どうしたのだろう?と互いに首を傾げて視線を交わす昌浩と物の怪。
そしてほとんど時間を置かずに、オダマキが再び戻ってきた。
彼の手には一つのモンスターボールが乗っている。


「マサヒロくん、君たちの旅にどうかこの子を一緒に連れて行っては貰えないだろうか?」


そう言いながら、オダマキはそのモンスターボールを昌浩に手渡した。
昌浩はオダマキの唐突な申し出に驚きながらも、差し出されたモンスターボールを反射的に受け取った。
昌浩は己の手の中にあるモンスターボールをまじまじと見つめる。
オダマキはそんな昌浩の様子に破顔すると、昌浩に手渡したモンスターボール・・・・厳密に言えばその中にいるポケモンについて話し出した。


「そのモンスターボールの中に入っているのはピチューという電気タイプのポケモンで、つい三日ほど前に卵から孵ったばかりなんだ」


ボールから出してごらん。とオダマキに促され、昌浩はモンスターボールの中からピチューを呼び出した。
ボールがパカリと開くと光が溢れ出し、その光は確固たる形を象っていき、最後には黄色の鼠みたいな生き物になった。


「ピチュ?」

「へぇ〜。この子がピチューって言うんですか?三日前に生まれたってことは赤ちゃんなんですよね?」

「見た目は黄色い鼠だな」


目の前にいる小さなポケモンを見て、二人はそれぞれ感想の言葉を漏らす。
ピチューは己へと視線を向けてくる目の前の二人(一人と一匹?)へ、その大きな瞳をぱちくりさせながら真っ直ぐに向けてくる。
オダマキはいまだにきょとんとした表情のままのピチューを抱き上げると、そのままそっくり昌浩へと預け渡した。


「さて、マサヒロくんが言ったように、この子は生まれたての赤ん坊だ。つまりは今の君たち同様、外についてはほとんど知らないんだ。だからこの子を共に旅に連れて行って欲しい。そして世界を見せて、感じさせて欲しいんだ」


オダマキは真剣な表情で昌浩たちに語りかける。
そんなオダマキに、昌浩は戸惑いの表情を浮かべながらもゆっくりと首を縦にと振って見せた。


「わかりました。責任を持ってこの子の面倒を見たいと思います。それに人数が多い方が旅も楽しくなるでしょうし・・・・・・・」

「そう言ってくれると助かるよ。存分にこの世界を楽しんできてくれ」

「はいっ!」


昌浩は元気良く返事を返すと共に、晴れやかな笑みをその顔に浮かべた。







こうして、昌浩と物の怪、そしてピチューはまだ見ぬ新たな世界への第一歩を踏み出したのであった―――――。














※言い訳
もう、どこから突っ込んだらいいのでしょう・・・・。色々突っ込みどころがありすぎて、かなり困ります;;

取り敢えず一番言っておきたいこと。
『文化の壁が厚すぎる!』
平安時代の人である昌浩が、こんな科学の発展した世界(それこそポケモン図鑑とか現代よりも未来の道具ですしね!)にさも当然のようにいることなんてできないと思います。家の造りとか、機械類とか(平安時代には機械とか存在しないよね?カラクリならありそうですけど・・・)、カタカナなんて存在しないでしょうし、その一つ一つについて文中にて説明するところを書こうとするときりがないので、このネタでは特別設定(またの名をご都合主義)を設けることにしました。

このお話では昌浩は横文字の言葉(カタカナとか外来語な言葉とか・・・)や、機械などについて、特に疑問を抱くことはなく普通に理解しております。「こういった機械があるんだ?ふーん・・・。」な感じです。機械自体の用途については知識がなかろうとも、機械という存在自体には違和感を持ってないという設定です。なので、以降の文章で昌浩が普通にカタカナを使っていようとも、敢えてスルーしてください。(いちいち突っ込んでいては身が持ちませんから;)
昌浩がオダマキ博士をさん付けで呼んでいるところもスルーしてください。(本来ならきっと殿付けなんでしょうけど・・・)

それと、セレビィについてもかなり捏造設定がなされています。
セレビィはアニメではジョウト地方のハテノの森、ゲームではウバメの森にて登場していますが、このお話ではある程度すすまない限り、セレビィの生息地の情報が昌浩たちに知らされることはありません。何故かといいますと、そうでもしないと昌浩たちが主人公組み(サトシたち)と合流をすることができないからです。(だって違う地方ですし、そちらに向かってしまえば、ホウエン地方を巡っているサトシ達と会うことができませんから)あ、ちなみにこのお話では舞台はアニメのアドバンスジュネレーションが時間軸となっております。ですが、ところどころでゲームの設定やポケスペの設定が混じってくる可能性もありますので、予めご了承ください。まぁ、舞台設定はこんな感じですが、ほとんどオリジナルストーリーになってしまうかと思います。何せ昌浩達視点でお話が進行していきますから・・・・。

とまぁ、長々とした補足話はこれくらいにしておきます。時間があれば昌浩の設定画をUPしたいなと思います。


2008/5/14