★クロスネタ2★少年陰陽師×ポケットモンスター

【story1】






白い世界を抜けると、そこは―――――――見知らぬ森の中でした。







「・・・・・・え?(汗)」

「・・・・・・どこだ、ここは・・・・・」


突然開けた視界に飛び込んできた見慣れぬ風景に、昌浩と白い物の怪は呆然とした表情で辺りを見回す。
ぐるりと一周する視界に移るのは青々と生い茂る木々と草花・・・・・。所謂森というやつである。
が、そんなことは一々確認しなくとも一目見れば誰でもわかるその光景を、昌浩と物の怪は信じられないという表情で見ていた。何故かというと・・・・・・


「もっくん・・・・俺達って、つい今しがたまで都の大路を歩いてた・・・・よね?」

「あぁ・・・。そのはず、だったんだが・・・・・」


何故に森の中?いやいやありえないだろ!どこをどうすれば都の大路から一瞬で森の中に移動できるというのだ。それこそ、瞬間移動でもしない限り不可能である。
あまりにも突発的な事態に、昌浩と物の怪は困惑を深めるばかりである。
互いに途方に暮れた視線を交わし合いつつ、とにかくここへ来る直前の出来事を思い返してみる。


「・・・・・・ここに来るまで、特にこれといったことはなかったよね?」

「そうだな。普通に歩いていたはずだ」


そう、ただ歩いていただけ。だというのに、どうしてこんな異常事態に陥らなければならないのだろうか。全くもって謎である。


「だよねー。一瞬だけ、視界が白じんだかと思えば、次の瞬間にはここにいたわけだし・・・・・・」

「・・・・・それが原因か?」

「それだけじゃここにいる説明がつかないって」

「・・・・・それもそうだな」


二重の溜息。


「・・・・・取り敢えず、歩いてみる?ここがどこだかわからないし」

「そう、だな。ここでうだうだ考えていても、何も始まらないしな・・・・・」


昌浩と物の怪はそう結論を出すと、取り敢えず歩き出したのであった―――――。






しばらくあてもなく歩いていた昌浩と物の怪。
その時、二人の耳に微かな人の叫び声が届いた。


うわぁーっ!


「!もっくん・・・・・・」

「あぁ、行ってみるか!」


昌浩と物の怪はお互いに頷き合うと、声の聞こえてきた方へと駆け出した。
二人が走り出してそう時間が経たないうちに、いきなり生い茂った草木達が途切れた。そして視界が大きく開かれる。
崖・・・・と呼ぶほど高さはないが、うっかり踏み外してしまえば怪我を負うこと請け合い程度の段差がある場所へと昌浩達はやって来ていた。


「!昌浩、あそこだ!」


物の怪の声につられて視線を向けた先には、尻餅をついて後退さっている一人の男の人と、その人を囲むように距離を縮めている犬のような生き物達の姿がそこにはあった。







                        *    *    *







オダマキは尻餅をつきながらも、じりじりと後ろへと後退さっていた。

そんな己の目の前にいるのは、4匹のポチエナと、1匹のグラエナ。
森の中を散策していたオダマキは、その最中に彼のポケモン達とぱったり遭遇してしまい、挙句追い掛け回される羽目となった。
己のうかつさに内心歯噛みしつつ、オダマキはこの現状をどう切り抜けるかを必死に考えていた。


「走って逃げても彼らの方が足は速いし・・・・・そうだポケモン!って、あぁあっ!駄目だ。例の三匹はこの間新しくトレーナーになった子達に渡してしまった!!ど、どうしよう?!」


あわあわと慌てふためくオダマキに、ポチエナ達はじりじりと近づいてくる。

とその時、ゴオオオッ!という音と共に、紅の灼熱がポチエナ達に襲い掛かった!
ポチエナ達は突然ふって湧いて出た炎に驚いたのか、瞬時に身を翻すと森の中へと駆け去っていった。

一体何が起こったのか今一状況が飲み込めず、ポカーンとしているオダマキの耳に、ズササッ!と土の上を何かが滑り落ちる音が届いた。


「大丈夫ですか?!」


声の聞こえてきた方へと視線を向けると、緩い傾斜の崖(というほどでもないがそれなりの高さがある)から男の子が降りてくるところであった――――。







犬のような生き物(何せ妖気とかそういった類の気配が一切せず、確かに生きている気配があったのだから生き物なのだろう)を物の怪の炎で取り敢えず追い払った昌浩達は、地面に尻餅をついている男の人へと近づいた。
男との距離を縮めることによって、その人の容貌が段々とはっきり見てとれるようになった。
歳の頃は三十も半ばくらいだろう。顎鬚を生やし、体つきはそれなりに良いようだ。
・・・・・あと、遠目でも気になっていたのだが、その男の人の服装はかなり変わっていた。一番上に羽織っている白い衣は昌浩の着ている物に近いところはあるが、それでも全体をみれば明らかに着ている服の様式が違う。敢えて言うとするならば、そちらの方が機能的で動きやすそうだということか・・・・。


「大丈夫ですか?」


どこか呆然とした表情を崩さない男の人に声をかける。
そこで漸く男の人はハッと我に返ったようだ。


「あ、あぁ・・・・大丈夫だ。ありがとう、お陰で助かったよ」

「いえ・・・。怪我が無いようで良かったです」

「いやぁ〜、本当に君のお陰で助かった。・・・・ところで、変わった服装だね?どこかの民族衣装かい?」

「え・・・・・?」


昌浩は目の前の男から発せられた言葉に、大きな戸惑いを覚える。
己にとっては相手の男の衣装の方が変わっているように見えるのだが、それは相手の方も同様らしい・・・・。けれど、「ん〜、でも造りは着物に似ている感じがするな・・・・・」と呟きを漏らしているあたり、昌浩が着ているような服を全く見たことがないわけではないようである。

と、昌浩をまじまじと眺めていた男の視線が昌浩の右肩・・・・・・・物の怪のところではたと止まる。
それに気がついた物の怪も男の方へと夕焼け色の瞳を向けた。
そして物の怪が向けた視線の先には、何やらキラキラと嬉しそうに輝く瞳があった;;


「君・・・・・・それ、新種のポケモンかい?」

「え?」

「うわっ!?」


男が何やら意味不明な単語を紡いだ途端、ガバッ!と昌浩の肩から勢い良く物の怪を抱き上げた。
男に急に引っ掴まれた物の怪は、驚いて男の腕から逃れようとじたばたと暴れ始める。が、そこは明らかに男の人の方が力があるので、ガッチリと抱き抱えられて逃げ出せる隙がない。
そんな間にも男の人は物の怪をまじまじと念入りに観察している。


「あの・・・・・」

「初めて見るな〜。だとするとホウエン地方には生息していないポケモンかな?だとするとカントー地方とか?・・・・いや、新種のポケモンが見つかったという話は聞いてないしな〜」

「おい、いい加減放せ!!」

「なっ、喋った!?君、このポケモンは人の言葉を喋るのかい?!」

「えっと・・・・・(ぽけもんの意味はわからないけど)もっくんは普通に話しますよ?」

「それは凄い!!」


一人で暴走している(興奮している?)男の人をどうしたら止めることができるのかわからない昌浩は、困惑した表情で男の人と物の怪を交互に見ているしかなかった。
物の怪の観察を終えた男の人は、満足げな表情をして昌浩へと物の怪を手渡した。


「いや〜、良いものを見させてもらったよ。ありがとう」

「いえ、それはいいんですけど・・・・・あの、一つお聞きしても宜しいでしょうか?」

「ん?なんだい??」

「ぽけもんって・・・・・何のことですか?」

「・・・・・・・・・・・・」










昌浩はその時の男の驚きに満ちた表情を、決して忘れはしないだろう―――――。













※言い訳
というわけで、昌浩ともっくんがポケモンの世界にトリップしました。そしてオダマキ博士とご対面!
オダマキ博士の言葉遣いが良くわからなかったり;;あ、一応このネタではアニメ設定で書いていこうかと思います。一部ポケスペとかゲーム設定が混じりそうな気がしますが、基本はアニメの世界観です。

さて、オダマキ博士が平気でもっくんを見ることができたり、触っていたりしてますが、ここでこのネタならではな特殊設定を設けたいと思います。
えぇと、昌浩達がこちらの世界へとトリップした時に、何の作用が働いたのか、もっくんの姿が見鬼の才がなくても徒人にも見えるようになりました。なのでオダマキ博士の目にもそこら辺の生き物と変わりなく、普通に見ることができます。

・・・・・というわけで、今回の説明はこのくらいにしておきたいと思います。感想などを頂けたら大変嬉しいです。



2008/4/10