陰陽師






陰陽師。


そう言われればまず脳裏に浮かぶのは陰陽師たちの尊敬と羨望を一身に集めている大御所中の大御所の安倍晴明である。

彼の人物は陰陽師の代名詞と言っていい程世間に幅広く知られている。


何故今になってこのような至極当たり前のことを掘り返しているのかというと、現在陰陽師というものについて悩める少年がここに一人いるからである。

少年の名前は安倍昌浩。

安倍晴明の末の孫である。

陰陽師というものに尤も近しく過ごしてきた彼が何故今になって陰陽師について考えるのか。
ことのきっかけは彼の邸に半永久的に居候している、声を大にしては言えない様な所の生まれの少女の一言であった。



「ねぇ、何故昌浩は陰陽師になろうと思ったの?」



にこにこと笑顔でそう問い掛けてくる少女に、昌浩は返答を窮していた。



「何故って・・・・・・・えーと、俺不器用だからさ、陰陽師の仕事以外これといって取り柄がなかったからかな・・・・・・?」



その陰陽師の仕事も十三歳の春になるまで自分に見鬼の才がなかったので諦めていたほどだったのだ、はっきり言って今の自分から陰陽師に関することを無くしたら何も残るものは無いだろう。

陰陽師になる以前までは何か一つでも取り柄になるものはないかとあれこれ手を尽くしてみたものだった。

しかし、笛を習おうと習字を習おうと返ってくる返事は『趣味に止めておきなさい』なのだ、当初はそれでかなりへこんでいたりもした。

だから、自分に見鬼の才があるとわかってからは陰陽師になること以外何も考えずに過ごしてきたのだ。

そして今になってどうして陰陽師になったのかと問い掛けられても『その場の勢いで』とでもしか答えようがないのである。

しかし、そのようないい加減な返答を彼の少女に返すわけもいかずしばらくの間考え込んでみたのだ。

敢えて理由を述べるのだとすれば<祖父を超える陰陽師になりたいから>であろうが、それは自分の意地からくるものであって純粋な理由ではない気がするのだ。

では、どうして陰陽師になりたかったのかという想いの出所を辿っていくとある一つのことに辿り着いて思わず笑みを零した。

何も陰陽師の在り方を考えずともよかったのだ。

そんなことを考えずとも自分はきちんと持っていたではないか。

陰陽師になりたかった理由が―――――。



「?どうしたの?昌浩」



ふいに笑みを零した昌浩を不思議そうな心持で彰子は見る。

突然笑みを浮かべた昌浩がとても嬉しそうだったから・・・・・・。



「うん・・・・・・さっき言ったことは撤回!ちゃんとした理由、思い出したから・・・・・・・・・」


「―――?じゃあ、どうして昌浩は陰陽師になったの?」



彰子が不思議そうな表情で昌浩に問い掛ける。
昌浩はそんな彰子にとびきりの笑顔で答えた。






「約束したから!」












あの日誓った約束は今もこの胸の中で生きている―――――。













※言い訳
というわけで初のお題挑戦!!
うーん・・・・・いまいち納得のいく文にならなかった・・・・・・・・・。
とにかく文才が欲しいですね、切実に。
ちなみに、昌浩の言う約束は晴明と交わしたものともっくんと交わしたもの、二つをかね合わせています。
やはりどちらの約束も重要なものなのだと思います。
更には彰子との約束・・・・・・・。
昌浩にとって陰陽師でいる理由はこれらの約束を守る為であり、また守り続けていくためなのではないかと・・・・・勝手に願望込めながら書きました。

2006/1/2