鉢合わせ





(やばいやばいやばいやばい!!!)



邸の塀に張り付きながら、昌浩は冷や汗を滝の如く流していた。


もう日常化してしまっている夜の見回りに出た昌浩と物の怪、あとは隠形しているが六合の三人(二人と一匹か?)は朱雀大路に向かって歩いていた。

朱雀大路に程近い大路に出るために歩いていた昌浩達は邸の物陰から大路に出たのだが、そこですぐに何かに気づいた昌浩は、慌てて今出てきたばかりの道に駆け戻ったのだ。



「おい、昌浩。一体どうしたんだ?」


「いや・・・・・・・・えっと、あれ・・・・・・」



怪訝そうに問い掛けてくる物の怪に、昌浩はこっそりと塀の陰から顔を出して出て行こうとした大路の先を指差す。

物の怪は昌浩の指差した先を眼で追う。

十間ほど先に松明を掲げて歩いている人が見えた。

すの人物は―――――――



「ちっ!似非<えせ>陰陽師かよ・・・・・・・全く間の悪い・・・・・・・」



昌浩が慌てて身を隠した原因であるものが、似非陰陽師(物の怪曰く)こと藤原敏次だとわかった瞬間、物の怪は明からさまに舌打ちをして機嫌を一気に降下させた。

そんな物の怪の様子に昌浩は苦笑を漏らす。

しかし、ふと何かに気づいたようにある方向、敏次の進行方向のずっと先に視線をやる。



「もっくん・・・・・・・」


「あぁ、妖だな」


「でもそんなに強いわけじゃないみたいだし、万が一敏次殿が遭遇しても大丈夫・・・・・・・・・だよね?」



大路の向こうから漂ってくる極微かな妖気を感じ取った昌浩は心配げにそう呟いた。



「あんなやつほっとけ!心配するだけ損だぞ」


「・・・・・・うーん、一応様子を見てみようかな?六合、長布貸してくれる?」


「あぁ、いいぞ」



六合から長布を借りた昌浩はそれで顔を覆い、いつぞやと同じ展開にならないように祈りながら敏次の後を追ったのだった。





少年陰陽師の夜は長い。











※言い訳
鉢合わせ。このタイトルを見た瞬間にこのネタを思いつきました。
とっしー好きですね〜なんか扱いやすいキャラって感じがします。



2006/1/13