綺麗なる心・優しき心・変わらぬ心














「ぐれん〜」
鈴が転がるような幼子の声が聞こえる。
「ん?何だ、昌浩」
呼ばれたのは褐色の肌を持つ青年。一見人に見える彼の人は、実は人ならざる者―神将だった。紅蓮が駆け寄ってきた幼子を抱き上げる。幼子の名を安倍昌浩。当代一の大陰陽師―安倍晴明の孫だ。

「あのね、これ、ぐれんにあげる」
昌浩はそう言うと一つの花を差し出した。
「なんだ?・・・すみれか」
目の前に突きつけられた花を見、紅蓮は小さく笑う。大方庭で遊んでいて見つけたのだろう。安倍家の庭は結構いろいろな植物が生息しているのだ。
「俺にくれるのか?」
「うん。とってもきれいだったの。だから、ぐれんも!」
庭で綺麗な花を見つけて嬉しくなったから、紅蓮にも喜んで欲しかったのだろう。つたない言葉で一生懸命思いを伝える昌浩に紅蓮は極上の笑みを返した。
「ありがとう、昌浩」
そう言うとぎゅっと抱きしめた。昌浩は嬉しいのか、くすぐったいのか、きゃっきゃっと声を上げる。
(こんな風に花を愛でることが出来るのも昌浩のおかげか)
紅蓮は暖かな気持ちでそんなことを思ったのだった。




















「あ、紅蓮!見てみて」
庭に降り立っていた昌浩は片隅に小さな存在を認め、紅蓮を呼ぶ。
「なんだぁ?」
訝しがりながらも昌浩が指差している方を見やる。
「・・・すみれか」
「うん。こんなに小さい花なのにさ、すごく綺麗だよね」
そう思わない?と聞かれ、そうだなと静かに答える。
「なんかこういう綺麗なものを見るとやさしい気持ちになれる気がする・・・」
独り言のような言葉を出しながら昌浩は一心に小さなすみれを見続けた。
そんな昌浩の様子を見ながら紅蓮は過去を思い出す。
(相変わらず変わらないんだな)
幼い頃と変わらない行動をする昌浩をやさしく見つめた。
(確かに花が優しい気持ちにさせるのかもしれないが、昌浩、お前が優しいからそう思えるんだよ)
紅蓮は心でそう思うと昌浩と小さな花を見た。


そんな二人を暖かな太陽がやさしく照らす。穏やかな初夏のひと時だった。































だいぶ遅くなりましたが1万5千打記念に。最近更新がまともに出来ずにごめんなさい。
今回の小説もあまり上手くはないんですが、気に入った方はお持ち帰りください。 1



またまた華の雫の神崎 怜様が書いた小説を頂いて参りました♪
本当に文章の構成が上手くって・・・・・見習いたいですねぇ。
今回、一万五千打記念のフリー小説をUPするにあたって、以前頂いてそのままUPし忘れていた一万打の記念フリー小説も同時にUPします

2006/6/1