闇は嫌い。











でも闇は好き。










言っていることは矛盾しているけど










でも、どちらも本当の気持ち――――――。
















好きと嫌いの判定条件
















唐突に目が覚めた。




最近は陰陽寮の仕事がかなり忙しかったので、今日は夜の見回りには行かずに早々に寝たのだ。
日頃の疲れが溜まっていた所為か、すんなりと夢の世界に入ることができたはずなのだが、何故か唐突に目が覚めてしまった。

閉じていた目をゆるゆると上げれば、視線の先には己の手。
次いで目だけを動かして周囲を見渡せば、自分のすぐ近くに白い毛並みをした物の怪が丸くなって寝ているのが見えた。
暗がりにだが、その白ははっきりとその存在を主張している。
あぁ、どこにいてもすぐに見つけられるよなと、妙に覚めてしまった思考でそう思った。


しばらくの間そうして物の怪をぼんやりと眺めていたが、期待を裏切り一向に眠気がやってこない。

諦めたように軽く息を吐き出し、腕に力を入れて体を起こす。
眠っている物の怪を起こさぬように、物音を立てないように細心の注意を払う。

そのまま自室から抜け出し、簀子に出る。


灯りもなく、暗闇の中で独り立ち尽くす。


今日は新月。
夜の世界で唯一の光源である月さえもない。

今日は風さえそよりとも動かず、耳を掠める雑音さえない。
無音の世界で唯一空気を震わせるのは己の呼気のみ。







何も見えない闇。




何も聞こえない闇。







目の前に虚無が広がる。



昌浩はそんな闇と向かい合い、ゆっくりと瞬きをする。












闇は嫌い。





だって、幼き頃に貴船に置き去りにされたことを嫌でも思い出すから。









闇は好き。





だって、大好きな彼が繰り出す炎が一番綺麗に見えるから。













どちらも同じ闇のはずなのに、どちらも違う闇なのだ。












では今は?

好き?嫌い?

どちらだろう?












今一どちらとも言い難くて、しばらくそのことについて考え込む。







どのくらい経ったのか。

時間など気にしていなかったから、自分が起き出したことに気づいた物の怪が自室から姿を現した。







目の前にやってきた物の怪を見て、少しばかり首を傾げる。

今まで無機質なものに感じていた闇が、急に温かく感じられたから。







どうかしたのかと物の怪が問いかける。

何でもないよと自分は答え、笑みを浮かべる。







先ほどまでの疑問が一気に解決する。








何笑ってんだと物の怪が訝しげにこちらを見てくるが、内緒!と言って自分ははぐらかす。









さっさと寝直せと物の怪が叱咤する。

うん、寝るよと自分は答え、自室へと戻る。









ぬくもりが薄くなった褥に潜り込み、開いていた瞼を下ろす。

物の怪もすぐ傍で丸くなり、再び寝る体制をとる。

自分はそんな物の怪を気配で感じつつ、やはり口元に笑みを浮かべた。















闇は嫌い。





だって、独りだから。











闇は好き。





だって、独りじゃないから。
















隣に連れ添う存在の有無。















それが好きと嫌いの判定条件―――――――。























※言い訳
なんとなく書いてみました。
それ以外に言うことがない・・・・・・・・。
ように言ってしまえば、もっくんの存在がいかに重要であるか!というのを主張してみようかと思いました。
ちゃんと主張できたかな・・・・・・・・・?

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2006/4/30