裏切り者のユダ
そりゃあもう、凄い勢いで。 「相変わらず宿題を溜めているんですねぇロード」 そう言ってティキの背後から白髪の少年が姿を現した。その少年に気づいたロードは嬉しそうに目を輝かせた。 「あっ!アレンだ〜v」 「アレンだ〜vじゃないですよロード・・・・・。一応、お久しぶりと言っておきます」 イスから勢い良く降りて自分のもとへやってくるロードに、白髪の少年―――アレンは呆れたように言う。 「うわっ!もう、いきなり飛びつかないで下さいロード。あ。ありがとうございますティキ・・・・・・」 ロードに飛びつかれたアレンは勢いを殺せずに倒れがかったが、そこをすかさずティキが支え転倒を防ぐ。 「それは別に構わないが、俺としてはこのままの体勢でずっといてくれると嬉しいな・・・・・・」 このままの体勢とは、アレンがティキに抱きすくめられている状態を指している。 「支えてくれたことには感謝しますが・・・・・寝言は寝てから言って下さい」 自分よりも背の高いティキを見上げる構図で、にっこりと微笑みながらアレンは痛烈な言葉をティキに浴びせ、その腕の中からするりと抜け出す。 「つれないなぁ〜アレン。家族として当然のコミュニケーションを俺は取ろうとしてるのに・・・・・」 「いくら家族と言えどセクハラは許されないと僕は思いますが?」 「え〜、いいじゃん。俺ら恋人だし?」 「意に沿わないスキンシップは不快にほかなりません」 「そんな〜(泣)」 付け入る隙も見せない物言いにティキは肩を落す。 「・・・・・僕の顔に何かついてるんですか?ロード」 「ん――、いや。ぶっ刺した眼、治ってるな〜ってv」 ロードは自分の左目を指しつつそう言った。 「・・・・・そういえば、よくも派手に怪我させてくれましたね。お蔭で完治までかなりの時間が掛かりましたよ?」 「え〜、でもアレンだしぃ・・・・ノアの一族ならすぐに傷も治るだろう?」 「状況を考えて下さい。僕はエクソシストとしてあちらに潜入している身ですよ?常人離れした回復力を見せたら怪しまれますって!」 「いや、眼潰されて治ってる時点でおかしいし・・・・(汗)」 そう、実はアレンはノアの一族だったのだ。 「頼みますから不必要な接触は止めてください」 「え〜、それじゃあほとんどアレンに会えないじゃん!」 「こうして経過報告の時に会えるでしょう?」 「それじゃあ物足りないよぉ〜〜」 小さい子どものように我が儘を言うロードに、アレンはほとほと困ったように溜息を吐く。 「我が儘もそれ位にしておきなさい、ロード。経過報告の時は必ず会えるんですかラv」 「ぶぅ〜〜」 「それとも、アレンに迷惑を掛けたいのですカ?」 「そんなわけないじゃん」 「それでは我慢することですネv」 「ちぇ!」 伯爵の言葉にロードはつまらなさそううに口先を尖らせる。 「ところでアレンvあちらの動きはどうなっていますカ?」 アレンがこの場所を訪れた当初の目的でもある経過報告をするように促す。 「特には・・・・・何もありませんね。エクソシストたちが総動員して元帥たちの護衛にあたっているのはもうすでに知ってますよね?だったら報告するようなことはないです」 「なるほど・・・・・ところで、今のところ正体がばれているような様子はありませんよネ?」 ばれているなんてそんなことは万が一にもないだろうが、伯爵は一応問い掛けてみる。 「当たり前です。あちらは使徒の中にユダがいることにも気づいていませいから」 裏切り者のユダ。 エクソシストであるのに、実はノアの一族である異端者。 「そうですか。わかりました、引き続き調査を頼みますよ?アレン」 「わかっています。精々ばれないように努めますよ」 軽い調子で答えたアレンは紅茶を一口、口に含む。 「―――っ!危ないじゃないですかロード!あなたの宿題に紅茶がかかっても、僕は知りませんよ?」 「ヘーキ、ヘーキ!・・・それよりさぁ、いつまで白くしてんの?アレンの黒い髪見たい〜〜!」 一体何を根拠に平気だと言うのか・・・・。 「んv白い髪も悪くないけど、やっぱ黒い方がいいや」 「それはどうも。・・・・ところで、いつまで乗っかっているつもりですか?いい加減にどいて下さい」 「ぶぅ―――!」 「いいからどけ」 段々不機嫌になっていくアレンに、ロードは渋々身を離す。 「しかし久々だよなぁ〜黒髪のアレン。つっても白い髪してんの、さっきの列車の時にしか見てないけど・・・・・・」 そう言いつつティキはアレンの髪を一房手に取り、まじまじと見る。 「見世物じゃありませんから、あまり不躾な視線を寄越さないで下さい、ティキ。簀巻きにして海に沈めますよ?」 「・・・・・それは困る・・・・・」 アレンの容赦ない言葉にティキは手に取っていた髪を手放す。 「(クスクス)人気者ですねぇ〜アレンはv」 「先程も言いましたが、あまり過剰なスキンシップは好みません」 「とか言いつつ実はとっても嬉しいんだろ?」 「絞殺と毒殺、どっちがいいですか?」 「ゴメンナサイ・・・・・」 気温が二度〜五度位下がり、冷ややかな冷気がアレンから漂ってくる。 「分かればいいんです。僕をからかおうなんて思わないで下さいね?」 かわいらしくにっこりと笑っているアレンだが、その眼は笑っていなかったりする。 「え〜〜、もう行っちゃうの?」 「仕方ないですよ。こっちはこっそり抜け出して来たんですよ?あまり長く留守にして不在がばれたら後か大変ですから、もう戻ります」 そう言ってアレンは扉へと足を向ける。 「それでは行ってきます」 「「「いってらっしゃい」」」 それに他の三人が挨拶を返す。 ◆ ◆ ◆ 「ん――、今日もいい天気さ!」 「朝っぱらから元気ですね、ラビ・・・・」 元気一杯のラビに比べ、アレンは少々覇気に欠けているようだ。 「なぁ―に朝からそんなに辛気臭そうにしてんだよ、アレン!」 「うわっ!」 バシン!とラビが景気良くアレンの背中を叩く。 「・・・・・痛いですよ、ラビ」 アレンは叩いたラビを恨めしげに見る。 「気にしない、気にしない!」 恨めしげな視線を送ってくるアレンに、ラビは至ってマイペースに答える。 「少しは気にして下さい・・・・・」 アレンはわざと大袈裟に溜息を吐く。 「行くぞ、アレン!」 「はい!」 差し伸べられたラビの手をアレンは掴む。 そして彼らは再び歩き出す。 元帥の一人を求める旅へと。
己が中に裏切り者がいることに気づかないまま、神の使徒達は時を過ごす。 彼らがユダの存在に気づくのは、一体何時になるのだろうか? その時はすぐそこにまでやってきている――――――。 ※言い訳 はいっ!初のノアアレンです。どうでしたか? このお話はイベントでコピー本に載せたお話です。 時期としてはアレンたちとティキが列車で会ったすぐ後位のものです。 本当は黒アレンでいこうと思ったのですが、灰色止まりです・・・・・・。 はぁ、もっと文才が欲しいな・・・・・・・。 感想などお聞かせください→掲示板 2005/12/25 |