「アレ?何でお前らがここにいんの?」
闇の中から突如として現れる、影。
任務をちょうど終えたところだったアレンとラビが弾かれたように顔を上げると、そこに立っていたのはどこかの上流貴族のような出で立ちの男。
黒いタキシードにシルクハットを身に付け、癖のある髪を後ろに流している。褐色の肌や魅惑的な瞳はエキゾチックな印象を見る者に与えた。
―――これだけ強烈な印象を持っている人物など、一度見たら絶対に忘れられないはずだ。
「・・・・貴方は・・・誰ですか?」
アレンが訝しげに男に問う。
アクマでないことは、自分の呪われた左目が反応しないことでわかる。――だが、どうにもこの男には違和感を持たずにはいられなかった。
二人のエクソシストは己の武器の発動を解かないまま、警戒しながら目の前の男を見つめた。
今しがたアクマとの交戦を終えたばかりでこちらは満身創痍。体力もほとんど無いに等しい。
こんな状態で戦うのはかなり無謀な行為といえるだろう。だが男はそんな二人の心中を知ってか知らずか、何かを思い出したように声を上げた。
「あー…そっかぁ。前、会ったときは違う格好だったからなぁ」
その意味深な言葉に二人が眉を顰めるのを見て、男はクスクスと妖艶に微笑んでみせた。
「――汽車で、ポーカーの勝負したろ?」
「!?」
まさか・・・と愕然と目を瞠った二人に、とても楽しそうな笑みを浮かべ、男は続けた。
「では改めて自己紹介でもしようか?こんばんわエクソシスト。
―――ノアの一族の一人、『ティキ・ミック』と申します――」
あくまで穏やかな言い方だったにも関わらず、その声ははっきりと二人の頭の中に染み渡った。
「俺等を・・・殺しに来たんさ?」
ラビが剣呑さを帯びた目で闇からの使者を睨みつけると、男は視線もものともせず淡白な物言いで質問に答えた。
「んー…そのつもりだったんだけどなぁ・・・―――気が変わった」
ふっとその姿が闇に同化するようにして掻き消える。
「っ!一体、どこに――…ッ」
「ここだよ」
全く何の気配もさせず、唐突にアレンの耳元ではっきりと声がして―――
「アレンッ!!」
「っ、ぅあ・・・っ!!」
次の瞬間にはラビの切羽詰った声と、アレンの悲鳴が重なった。
一瞬の間に、アレンは生身である右腕を後ろにギリ、と捩じ上げられ、痛みに端正な顔を歪ませた。集中力が乱れた所為で左腕のイノセンスの発
動も解けてしまう。
『お前が欲しくなったんだよ…』
低く甘やかな声が、耳元で囁くように響き、背にゾクリとした震えが走った。
―――『だから、力ずくででも手に入れてやる』―――
トンッ、と男が手刀で軽く項を叩く。
一瞬びくりと瞳が見開かれたかと思うと、ゆっくりと瞼が閉じていき、身体がぐらりと傾いだ―――
まるでその瞬間だけスローモーションのように時が流れ、男にぐったりと凭れかかるようにしてアレンは倒れた。
「アンタ・・・ッ!!アレンに何すんさ!?」
怒りが頂点に達したラビが声を荒げ、今にも飛び掛らんばかりに殺気立つ。
「なぁお前・・・俺とゲームしないか?」
「ゲームだと・・・っ!?」
「そ。俺が攫った『お姫様』を『騎士』であるお前が奪い返せたら勝ち、だ。…とてもシンプルだろ?」
突然、男の側の空間に闇より暗い色の闇が生じた。
「なっ・・・」
「ゲームはこの空間に入った瞬間からスタートだ。嫌ならこの『お姫様』を見捨てて逃げるこった」
―――さぁ、お前はどうする・・・―――?
「・・・・アンタの茶番に付き合うわけじゃねェさ」
俺はアレンを助けたいから助けに行くんだと。ラビは戦う構えを見せた。
「それでも構わないさ」
不敵な笑みをその顔に浮かべ、男がアレンを抱き上げて闇へ足を踏み出す。
「また会おう」
そう言い残すと、彼は身を翻して消えた。ラビも即座にその後を追い、闇の中へと身を投じた――――。
* * *
ラビが入ってすぐ、背後で入口は閉じてしまった。トンネルのような空間の中、帰ることができるのかどうかさえわからない不安が胸の内に募って
くる。
それでも。
アレンを見捨てて、自分だけ教団に帰るなんてことは絶対にしたくなかった。
いつも任務が終わったら真っ先に互いの無事を触れて確かめ合って。泣きたくなるほどの嬉しさと愛おしさに身を焦がし、衝動のままにその身を
掻き抱く。言葉にならない想いが互いの熱を一層高めて、自分達の存在をより確かなものだと感じることができた。
「・・・・ダイジョブ。今回だって、絶対一緒に帰れるさ」
弱気な考えを打ち消すように、ラビは強く自分に言い聞かせる。―――今、アレンを救えるのは自分一人。
・・・・だが、未知の敵に傷だらけで立ち向かって、果たして自分は無事でいられるのだろうか?
できれば――一緒に帰りたいけどさ・・・
もしダメだったらせめて――――・・・・
「アレン・・・」
お前だけでも。
どうか――――
ラビは決意に満ちた視線を前方に向け、武器を構えなおした。
暗がりからぞろぞろと現れる幾人もの人影――その目に光は無く、どんよりと濁った目を此方にゆうるりと向ける。
「随分・・・歓迎されてるみたいさな」
皮肉めいた笑みを浮かべ、ラビは哀れなアクマたちを破壊すべく、地を蹴って槌を振り下ろした――。
この小説は1万打を記念してのフリー小説なので、コピペしてどうぞご自由にお持ち帰りしてくださいませ☆
文そのものや作者詐称などをしなければあとは煮るなり焼くなりお好きなように(´∀`)ノ・゜*
内容は・・・いつか続きなんかも書いてみたいなぁとか思ってますが・・・いつになるか(苦笑)
ラビアレ←ティキな感じで書きたかったんですが…サクサク書いてったために全く文の構成がなってない。
まぁそれはご愛嬌。(そんなの愛嬌じゃない)
報告は任意ですが、あると管理人まるで犬のように尻尾振って喜びます。か、感想なんかも頂けると嬉しかったり・・・LL