『ゲヘヘヘヘヘ!!無理だ無理だ!』
         漆黒の帳が街を覆いつくしている時間。静かな路地に、突如不快な声が響き
         渡る。
         『元帥共は助からねェ!!ノアとアクマが大軍で奴らを追いかけてるんだぜ』
         壊れかけてなお、不快な言葉を吐き続ける人形を神田は黙って見下ろす。
         『お前らがこうしてアクマを壊している内にも「
ドン!!
         「うるせェ」
         こののまま永遠と話を続けそうな人形の頭に刀を突き立てて完全に破壊する。
         役目を終えた刀身を鞘に戻していると、
         「行くぞ神田」
         と後方から仲間の掛け声が聞こえてきた。
         粉々になったアクマを冷めた目で一瞥して神田は踵を反した。
         「まったくジャマじゃん、次から次へと襲ってきやがってちっとも進めやしない」
         「オレ達を足留めしてェんだろ」
         「元帥に辿り着くだけでも一苦労だな」
         隣から聞こえてくるぼやきに不機嫌極まりない様子で舌打ちしながら神田は
         答えた。
         「なんだ?イライラしているのか神田」
        
 「してねェよ!」
         イラついている神田の様子を見て声をかけてきた仲間に、即答で否定の言
         葉を返す。
         「しっかし、いつになったら辿り着くのかねェ。オレ達の探すティエドール元帥は、
         もうこの街にゃいねェみたいじゃん、まったく足が早いっつーか、鉄砲玉っつーか」
        
 まったくだ
         口にこそ出さないが、三者三様に元帥に対しての文句の言葉を吐いているのは
         明らかであった。
         「どうせ、どこかで絵でも描いているんだろう」
         「まったく、オレらも変な師を持っちまったなあ神田」
         愚痴を零しつつも話を神田に振る。と、
        
 「俺はあのオヤジが大っ嫌いだ」
         声こそ小さかったが、やたらと強く強調された言葉が返ってきた。

         「「は・・・・・・・」」
         ((だから機嫌悪いんだぁ))

         「ま・・・
クロス元帥よりはマシじゃん・・・・」
         一段と機嫌の悪くなった神田に気休めの(あんまり気休めにはならないが)
         言葉をかける。というのは建前で、そうでも思わないと「やってられるか!」
         投げ出してしまいたくなる。
         しかし、仲間の胸中を知ってか知らずか、神田は更に言葉を続ける。

         「だからあのオヤジが
アクマに襲われようが、そこらへんで
      のたれ死のうが、
俺にとってはどうでもいいことだ。ただ、
         あいつと一緒にいる時間が削られることが
何を差し置いても一番
      気に入らねェ!


         なんかものすごく問題な発言があったような気がするのは気のせいか?

         「「(あぁ、そういうことか)」」
         今にも毒電波を出しそうな位イラついている神田を、二人は生暖かい目で
         眺めつつ、密やかにエールを送るのであった。


         今から神田のイラつきが治まるまではとても長い時間が掛かってしまうのは
         言うまでもなかった。











      ※言い訳

       初のDグレの小説です。
       はっきりいってネタバレ必須な内容でした。すみません。
       神田の言っていた「あいつ」とは皆さん言わなくともわかりますよね?
       あいつとはもちろんアレンのことです。

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       2005/3/15