「・・・・・もう一度だけ聞く、お前は安倍の者か?答えなくばこいつにお前を襲わせるぞ」






自分にとって意味があるのは安部か否か。
それ以外ではこの目の前に尻餅をついてがたがたと震えている男に興味も何もない。

はっきり言ってこの男が『安倍の者』だとは思っていない。
というかこんな小心者が安倍の者だったらかなり嫌だ。というか失望する。


自分の言葉を聞いて、足元で控えていた己の式である銀色の獣―――疾風が紅い瞳を爛々と輝かせながら低く唸り声を上げる。



「っ!ち、違うっ!!俺は安倍の者ではないっ!!!」


襲われてはひとたまりもないと思ったのか、男は引きつった声で否を告げた。
ほら、やっぱり違う。
まっ、当然だろう。こんな情けない声を出すやつが安倍を名乗ってたら即行で八つ裂きにしてやる。


「なんだ、違うのか。それならそうとさっさと言えばいいものを・・・・・・」


男に聞こえない位の音で舌打ちをする。

ったく、さっさと答えろよな!

人違いと聞き、自分を取り巻く空気の剣呑さを少し緩ませる。
もちろんわざとだ。
この男が逃げ出せるような隙を作るため。


「うっ、うわあぁぁぁぁっ!」


案の定、自分の変化を敏感に察した男は脱兎の如くその場から逃げ出した。
そんな男を追う気は全くないので、そのまま見逃した。
闇に紛れるまでその男の背中を眺めた。

つーか、無防備すぎ・・・疾風をけしかけたら簡単にやられそう。
まぁ、一般人にんなことを言っても無理な注文か・・・・・。

しかし、こんなことをやって何の意味があるんだろ?一応あいつから言われたことをそのまま実行してるわけだけど・・・こんなんで本当に安倍のやつら引っ張りだせるのか大いに疑問。
今のところは安倍の者に動きはなし。
俺ってじっと待ってるの苦手なんだよなぁ・・・・・・。


「あ―あ、待ち伏せってのも結構面倒だな・・・・いっその事こっちから出向いてみようか、なぁ疾風?」


そう言って足元に居る己の式である銀色の獣に話しかける。

あっ!それって結構名案かも。

話しかけられた疾風は軽く唸って返事をする。
もちろん賛成の意だ。
それに自分は満足そうな笑みを浮かべ踵を反す。


「さ―てっ!誰からいこうかな?」


独り言を呟く。
さて、誰に会いに行こうかな・・・自分の記憶にある安倍の者の顔を浮かべる。
色々浮かんできた中で選び抜いたのは晴明の二番目の子、吉昌の息子達。
うん、こいつらだったら色々楽しめそう!
俺の顔を見たらどんな反応するかな?
すっごく楽しみだ。

よし、会いに行くか。まずは長兄の成親の所。
これから先に起こることを予想し、俺は笑い声を漏らす。

まっ、命令にはないけど死ななきゃ手を出してもいいよね?
なぁ?爛覇?


そして、少年はその場に笑い声を残して姿を消した。











少年は復讐者であって、復讐者ではない。
復讐者の手足になる人形―――遂行者だ。
遂行者は決して復讐者に逆らえない。
何故なら復讐者は遂行者の創造主だから・・・・・・。








「早く気づいてよね、昌浩」










※言い訳
はいっ!初の隠しページ。
もしやと期待してこられた方、残念でした!この隠しページは昌浩や第三者視点以外・・・・・つまりは別のキャラ視点での話を書くというものになります。
今回は寛匡視点のお話。というか隠しページの大半は寛匡視点のものになると思います。
では、お手数ですがブラウザでお戻りください。

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2005/10/9