「やだな〜、そんなに殺気立っちゃって!」 自分を睨みつけてくる十二神将に少しだけからかうような口調で話しかける。 「ふざけるのも対外にしろよ?俺はあまり気は長くない、さっさと本当の姿を見せろ!!」 案の定、白い猫の様な姿をとっている神将は怒気も顕に詰問してくる。 神将って案外気が短いんだね〜。それともこいつだけ別なのかな? 「見せろって言われて、はいそうですかってこっちが素直に姿を見せると思う?だったら神将って案外馬鹿だね」 なんて暢気な感想を抱きつつ不遜な態度で返事を返す。 もちろん煽ることが目的だ。 なんせ十二神将にははた面倒極まりない「人を傷つけてはいけない・殺してはいけない」っていう理があるもんだから自分に手を出すことはできないだろう。 あっ!でも、こいつはすでに三度も理を破っているんだっけか。まっ、不可抗力だったみたいだから仕方が無いけど。 「・・・・・・・・・・・・・・・」 馬鹿にしたような俺の科白を聞いて、物の怪は自分を取り巻く怒気をより一層強くする。 そんな物の怪の様子に俺は軽く肩を竦めて昌浩へと視線を移す。 「残念だけど、これ、一応俺の素顔だからね?」 その場の重苦しい空気を無視して昌浩に向けてにっと口の端を上げながら自分の顔を指差す。 「素顔?」 あっ、驚いてる驚いてる。 そりゃあ、素顔でここまでそっくりなのも何だけどさ〜ほんとのことだから仕方が無いよね。こればっかりは俺には責任ないから。 しかし実際に対峙してみて思ったんだけど俺って腹黒い? おかしいな〜基の設定は一緒なんだけどな・・・・・・・何でだろ? 「うん、そう。生まれた時からこの顔だから。やっぱ不快?」 微かに悲しそうな表情を作ってそれとなく聞いてみる。 あ〜、ここら辺のとこみれば、どっちかっていと腹黒っていうよりたぬき?ちょっとそれは嫌だな・・・・・。 なんて内心あれこれ考えているのは顔に出さずに昌浩を見る。 ちょっぴり困ったような顔をしている。 心情的に複雑なようだ。うん、その気持ち俺もよくわかるよ。 「えっ・・・・「自分と同じ顔したやつが目の前にいきなり現れたら不快に決まってるだろうがっ!!」 不快?と俺に聞かれて口篭った昌浩を遮って物の怪が代わりに答えた。 邪魔だな・・・・・昌浩とゆっくり話ができないじゃんか。 昌浩に視線を向けていた俺は、不愉快そうに眉を顰めながら間を割って入った物の怪を見る。 少しの間、黙っていて貰おう。 「黙れ・・・縛っ!!!」 「なっ!」 「もっくんっ!!」 一言低く呟くと共に物の怪に金縛りの術を放つ。 物の怪は意表を突かれて身動きの自由を奪われる。 あ、案外あっさりと術に掛かってくれた。いくら何でも気を抜きすぎてないか?そんなんだといざって時に大切なものも護れないと思うぞ。 昌浩へ視線を向けると、その様を見て驚きに眼を開いる。 そりゃあ、不意打ちといえど神将に術を掛けることができたんだしな・・・・でも、この位なら昌浩だってやればできるんだよ? 物の怪の動きを封じた俺は物の怪をひたと見据える。 今まで楽しそうに輝きを、絶対零度を纏ったひどく冷たい輝きにかえて。 折角予定通りに接触することができたのにな・・・・・。 「俺は今昌浩に聞いてるの。余計な口出しは無用だよ」 「っの野郎!」 物の怪がそう叫ぶと同時にパンッという術の破れる音がした。 やっぱり簡単に破られるか・・・・まぁ、当然と言えば当然か。 「この俺に術をかけるとはいい度胸じゃねぇか・・・・・」 「ふぅ・・・・流石は十二神将、この程度の術ではあっさりと破られるか」 「当然だ。この程度の力で抑えられるとでも思ったか?」 「まさか!―――しばらく時間を稼げ、疾風」 そうだね、俺あんたの実力はよく知ってるしさ。 ここは疾風に任せて、ほんの少しだけ時間を稼いで貰おう。 そう考えた俺は疾風に命じる。 掛け声と共に物の怪の前に一匹の銀色の毛並みをした狼じみた獣―――疾風が立ち塞がる。 「!式か」 「ご名答。神将には悪いけど、疾風の相手をして貰うよ?」 「この俺が式ごときに遅れをとるとでも?」 「ふっ、それはどうかな?いけっ!疾風!!」 別に神将相手に優勢になる必要はない。ただ少しだけ時間を稼げればそれでいい。 俺の掛け声で疾風は物の怪に飛び掛っていった。 物の怪も応戦の体制に入る。 その様子を見送ってから、改めて昌浩と向かい合う。 「さて、と。これでゆっくり話せるな」 「・・・・・一体何が目的だ?」 昌浩は油断無く身構える。 そんなに警戒しなくてもこっちとしては危害を加える気は無いんだよね〜。 命令とかで行動しているのならまだしも、これは俺の独断行動だから。 警戒心を薄くさせるためにも、俺は軽く笑みを浮かべる。 「悪いけど、今回は俺の独断行動だから目的っていう目的は無い。しいて言えば顔合わせ、かな?」 「顔合わせ?」 「そう。だから今日は何もしないから安心してv」 そう言って俺はにっこりと笑う。 そんな俺を見て昌浩は頬を引き攣らせる。 自分そっくりな顔でにっこりと笑いかけられれば、そりゃあ違和感ありまくりだろうな・・・・・。 俺も同じ立場だったら、全く一緒の反応をしただろう。 「その顔が素顔というのは本当?」 「まぁ、いきなり目の前に現れたやつが自分そっくりの顔してたら疑いたくもなるだろうけど、本当だよ。なんなら顔抓ってみる?」 小首を傾げながらも俺は昌浩に問う。 あ〜、でも顔を抓られたら多少なりとも痛いかな?自分で言っておいて何だが、それはちょっとな・・・・・・。 内心そんなことを考えつつも昌浩の反応を窺う。 「いや、そこまでして確かめなくても・・・・・・・・;;」 昌浩は苦笑気味の笑みでそう返事を返した。 ふぅ、これで顔を抓られるのは免れる。尤も、昌浩がそんなことはしないというのは確信を持って言えるけどね。 「そう?でもそんなこと言っていいの?仮にこの顔が偽りだとして、俺がこのままで悪さをすればどうなるかとか考えないの?」 「それって、素顔だろうが偽者だろうがあんまり関係ないと思うけど・・・・・・・」 「あっ、それもそうか」 「・・・・・・・・・・」 そう言われれば確かに。これは抜けた例えになっちゃったな・・・・一応注意のつもりで言ったんだけど、素で惚けを披露してしまった;; あ゛、何か昌浩も呆れたような顔してるし・・・・・・・。 何やらぶつぶつと独り言を言っている昌浩を見つつ、失敗したかな?と考える。 まぁ、どうやらこの惚けは別の意味で効力を発揮したらしい。 緊迫した状況で対峙している物の怪・疾風組と比べ、こちらは緊張とかけ離れた実にほのぼのとした空気が漂っている。 そんなに時間は取れないから、話をさっさと進めることにしよう。 「―――とまぁ、こんな間抜けな会話をしているわけだから、悪用とかそういったことは考えてないと思ってくれていいよ」 「はあ・・・・・;;」 呆れた様子を隠せない昌浩。 どうしようかな?と考えつつ、一瞬の隙を突いて昌浩との間合いを一気に詰め目の前に立つ。 そのことに気づいた昌浩は慌てて距離を置こうとするが、それを自分は許さず、昌浩の腕を掴まえて距離を置こうにも置けないようにした。 しかし、本当にそこまで警戒しないでよ;;否、隙だらけってのも何だけど・・・・・・。 「もぅ!今回は何もしないって言っただろう?そんな警戒しまくらないでよ」 僅かばかり拗ねたような態度で昌浩に文句を言う。 「そんなこと言われても・・・・・・(困)」 昌浩が困ったような顔をする。 今日はこの位にしておいた方がいいかな?疾風もそろそろきついみたいだし。 「むぅ〜。ま、しょうがないか・・・・・じゃあ今日はこの辺にしとくよ。―――あっ!そうだ昌浩、ヒントを教えてあげる」 「えっ?」 「一つの花とその花弁。それが俺達だよ」 俺は昌浩の耳元で昌浩以外に聞こえない程度の声量で囁いた。 それは最大にして決定的なヒント。 それは真実を如実に表した言葉。 怪訝な顔をする昌浩に何か含んだような笑みを向け、少年は昌浩から離れつつ疾風に合図を送る。 合図と共に物の怪と対峙していた疾風は素早く自分の下に戻る。 「まっ!それは一体どういう・・・・・・」 「寛匡」 昌浩の疑問の言葉を遮って、自分の名を告げる。 その疑問の言葉に答える権限を自分は持ち合わせていないから。 「え?」 俺の唐突な言葉に、昌浩は怪訝そうな顔をする。 「俺の名前。まだ名乗ってなかっただろう?こっちばっか名前を知ってるのも不公平だし」 そう言って俺は軽く肩を竦める。 これは建前ってやつで、本当は自分の名前を知っておいて貰いたいから。 水鏡の中に映る己の名。 「名など知ったところで!」 突然の名乗りに声を荒げる神将。 「名は一番短い呪。そうだろ?神将」 それは、暗に名前というものが如何に大事なのか、お前は知っているだろう?という意味を含ませた科白。 「―――何が言いたい?」 言葉の含みを感じとったのか、物の怪が僅かな反応を示す。 「別に、言ってみただけだ。それじゃあまたな昌浩、神将」 これ以上、変に勘繰られては困るので強制的に会話を打ち切る。 昌浩に会うっていう目的は果たしたしね♪ そうして俺はその場から姿を消した。 さて、今後は一体どんな展開になるのだろうか? この先に訪れる嵐については遂行者も何も知らない。 全てを知るのは復讐者のみ。 舞台の準備は整った。 役者も揃った。 さぁ、舞台の幕上げだ。 ※言い訳 隠しページ第2弾です。 私が当初考えていた性格と段々かけ離れてきています。 当初の予定ではスレた性格のつもりだったのですが、スレというよりは腹黒?どうしようかな・・・・・・。 さて、次の隠しページはいつのことになるのやら。気長にお待ちください。 感想などお聞かせください→掲示板 2005/11/6 |