笑顔と幸せを分け合いましょう |
「ハロウィーンって、何ですか?」 ふいに零された疑問に、室内は一気に静まり返った。 その場にいた全員の視線は、疑問を投げかけた白髪の少年へと集中する。 「アレン君、ハロウィーンを知らないの?」 驚きに目を大きく瞠ったリナリーが、戸惑いがちに聞いてくる。 言葉にこそ出さないが、当人を除いて全員が同様の戸惑いを感じていた。 「あっ、いえ。秋の収穫を祝って、悪霊を追い出す祭りだということは知っていますよ?」 「うーん、意味合い的にはそれで合ってるよ。でも、アレン君のその言い様だと、お祭りでどんなことをするのか知らないみたいだね?」 ハロウィーンとはなんだ?と聞かれたら、まず真っ先に思い浮かべるのはカボチャをくり抜いた提灯と様々な怪物の仮装をした子どもがお菓子を貰いに近所を歩き回る姿だろう。 それなのにアレンは実質的な意味を述べてきた。それが意味するところは――― 「ふんっ!所詮はモヤシだな。ハロウィーンで何をするかも知らないとは」 「何ですかその言い草はっ!・・・・そういうカンダこそ、ハロウィーンに参加したことあるんですか?」 「あ?俺がそんな行事に参加するわけねーだろ」 「だったら・・・・・・」 「だが、参加したことがないのと、ハロウィーンについて知らないのでは話が違うだろ。俺は参加していないが、ハロウィーンで何をするかぐらいちゃんと知ってるさ」 そんなこともわからないのか?と、カンダは馬鹿にしたような態度でアレンに視線を投げかける。 アレンはそんなカンダの態度にムッとするが、言っていることは至極尤もなので反論することができない。 険悪な空気が二人の間を流れ始めるのを察したラビは、慌てて二人の間に入り込む。 「はいはい、ストーップ!喧嘩はよくないさ。カンダもアレンを挑発してないで、ハロウィーンについて少しでも説明してやればいいのに・・・・・・」 「はっ!何で俺がこのモヤシにんなことを一々説明してやらなくちゃいけないんだよ?俺にはそんな義理はないな」 「ユウは素直じゃないさ〜」 「・・・・俺は『ユウ』と呼ぶなと何度も言っているだろ?細切れにされたいのかテメー」 目元を険しくしてスラリと刀を抜き放つカンダに、ラビは慌てて首を横に振る。 「イエ、メッソウモアリマセン」 「テメーは何度口で言ってもわからないようだからな、丁度いい。その身にたっぷりと思い知らせてやるっ!!」 「ぎゃーっ!!殺されるぅ〜!」 「大人しく観念して刀の錆になれっ!!」 般若の如き形相で刀を構えて追いかけてくるカンダから、ラビは必死になって逃げる。 そんな騒音が飛び交う中、アレンはすぐ傍にいたリーバーに先ほどの質問をすることにした。 「あ〜、で?ハロウィーンって実際には何するんですか??」 「ん?あぁ・・・カボチャくり抜いてランタンを作ったり、子供が怪物の仮装して近所中を回ってお菓子を貰ったりするんだよ。『トリック・オア・トリート!』ってな・・・・・本当に知らないのか?」 何ともいえない微妙な顔をするリーバーに、アレンは苦笑を返した。 「えぇ、まぁ・・・・・マナと暮らしていた時はハロウィーンの日でも外に出ることなく家で静かに過ごしていましたし、師匠について回るようになってからなんてそんな暇はありませんでしたしね。第一、師匠はそういった行事に関心ありませんでしたから」 「ふ〜ん?でも、お前自身は?ハロウィーンなんて子供のためにあるようなイベントだぞ?大人とか関係なく参加できただろ?」 「・・・・・・・知っていますか?子供って、自分たちと異なるものには脚力近づかないようにするんです。生憎このような体でしたから、あまり近所の子達と親しくはなれなかったので一緒になって参加することはできませんでした」 「あ・・・・わ、わりぃ・・・・;;」 寄生型のイノセンスを持っているアレン。 そのイノセンスが埋め込まれている左手は、どう見ても常人のものには見えない。 子供達は排他的だ。 少しでも自分達と異なれば、躊躇なく弾きものにする。 アレンもその例に漏れなかった。 そんな状況では他の子供に混じって参加することなど、到底できるものではなかった。 その意味を漸く理解したリーバーは、気まずげな表情をしてアレンに謝った。 そんなリーバーに、アレンは諦めにも似た静かな笑みを浮かべるだけだった。 「いえ・・・・・ですから、ハロウィーンはどのようなものか知らなかったので聞いてみたのですが・・・・・思いの外驚かせてしまったみたいですね」 「いや、それは別に構わないんだが・・・・そういうのって話で聞くよりも、実際に参加してみた方がずっと楽しいだろうなと思っただけだ・・・・・・・」 「そうでしょうね。お祭りだって話を聞くよりは、実際に参加した方が面白いでしょうから」 「・・・・・・・・・」 なんかどんどん墓穴を掘り下げていっているような気がする;; 言葉に窮したリーバーは、落ち着きなく視線を彷徨わせた。 適当な言葉が思いつかず、気まずい沈黙が流れる。 その時、コムイと何やら話していたリナリーが、こちらへとやって来た。 「アレン君!」 「?どうかしましたか?リナリー」 ツカツカと歩み寄ってきたリナリーは、アレンの前にまでやって来てアレンの手をとった。 そして――― 「ハロウィーンパーティしよっ!」 にっこりと笑みを浮かべて、そう一言言った。 「・・・・・え?」 「ジェリーさんに頼んでカボチャ料理をいっぱい作ってもらって、カボチャのランタン作って、仮装もして・・・・・・ね?」 「え?いや、あの・・・・・・」 「お〜、リナリーナイス提案さぁ・・・・・」 にこにこと笑んでアレンの言葉を取り合わないリナリーに、ぼろぼろになって帰ってきたラビが賛同する。 そしてそのままアレンへとヘロヘロともたれ込んだ。 「だ、大丈夫ですか?ラビ」 「カンダの奴、手加減なんてちっともしてくれなかった・・・・・。まぁ、それはそっちに置いといて、もちろんするだろ?ハロウィーンパーティ」 「パーティをするって・・・・一体どこで?」 「ん?それはもちろんココだよv」 アレンの疑問に答えたのはコムイ。いつの間にか彼は目の前へとやって来ていた。 アレンはコムイのふいの登場に驚いたが、彼の言ったことばを理解した時更に驚きに大きく目を瞠った。 ここということはつまり――― 「エクソシスト本部で、ですか・・・・・?」 それはちょっと不味くはないのだろうか? 「ん?大丈夫だよ。元々小規模のパーティはするつもりだったし・・・・・それが少し大きくなっても問題ないさ。うちの人達は皆お祭り好きだからね、寧ろ喜んで飛びつくさ」 何せ日々任務任務だからね〜。潤いがないとやってはいけないさ! そう言ってコムイは笑った。 そんなコムイを見ても、アレンはいまだに困惑した表情のままだった。 それに見かねたラビは、強めの力でアレンの背をどついた。 「っ?!げほっ!な、何するんですかラビ!!」 「何困った顔をしてるんさ。皆が楽しもうって言ってるんだから、もちろん一緒に楽しもうって思えばいいんじゃねーの?」 「・・・・・そ、うですね・・・・・えぇ、皆で楽しみましょう」 「よしっ!それじゃあ、はりきって準備をしようかっ!!」 「「「「おうっ!」」」」 さぁ、さくさくと準備を始めようぜ〜!と言う面々に、アレンは声をかけた。 「あのっ!皆、ありがとうございます!!」 「いいんだよ!それよりも、思いっきり楽しもう!!」 「―――っ、はい!!」 笑顔で答えてくれる彼らに、アレンも笑顔を返した。 その後、「俺は参加しないっ!」と言い張るカンダを引きずってパーティの準備へと向かう彼らの姿が見かけられた―――――。 ※言い訳 はい、久々にDグレのお話を書きました。 ちょっとシリアスが入りましたが、基本はほのぼのをめざして書きました。 気に入ってくださったら、どうぞご自由にお持ち帰りください。 2006/10/21 |