出張・虚討伐隊!!〜後編〜












一護達が五年前の昌浩達と遭遇していた頃、昌浩達も同様に五年後の一護達と遭遇していた。

昌浩を一目見るなり、一護は「あ〜、そういえばあれから五年も経ったけ?」と懐かしげな表情をして言葉を漏らしたのであった。
事情を説明する手間が省けた昌浩達は、早速件の虚を探し始めた。


「・・・ところで、例の虚って俺達がやって来る前には一度も見かけなかったの?」

「あぁ。確かあれは貴船んとこの神が三つに分散した虚を、俺達が直ぐに追ったんだったよな?なら時間差的にもそう差があるようには思えねぇしな」

「そうだな。少なくともここ一週間は虚は出現してはおらぬ」

「そっか・・・・直ぐに見つかるといいんだけど・・・・・・」


一護達の話を聞いて不安そうな表情になる昌浩。
そんな昌浩に、一護は「まぁ、なるようにしかならねぇだろ?」と言って励ます。

街中を探索していた昌浩達は、街の外れまで来るとその足を止めた。


「やっぱり、無闇に探しても見つかることはないか・・・・」


わかっていたことだがなと言葉を漏らす物の怪に、昌浩も一つ頷く。


「後は向こうから出てくるのを待つしかないけど・・・・そんなに悠長なことは言ってられないだろうし」

「あ!そうだ、昌浩。お前の『剣』に索敵能力ってあったよな?あれで探すことってできないのか?」

「あ、そうか!」

「おいおい、しっかりしてくれよ。晴明の孫」

「孫言うなっ!!」


ぎろりと物の怪を睨みつけた昌浩は、数度深い呼吸を繰り返すと、すっ・・・と徐に空手を眼前に掲げる。
さわりと空気が揺れ動き、その色を変えていく―――――。


「汝、天つ空に咲き誇る紅き華。花開き舞い散れ――灯籠花〈とうろうばな〉」


昌浩が詩〈うた〉を詠み上げると同時に、その手に白炎が灯る。
生じた炎は見る間に形を変えていき、最後には一振りの剣となった。
その形は青銅剣のように平らな造りとなっており、刃の表面には細かく文字が刻み散らされている。そしてその色は深みのある臙脂色であった。

『剣』―――それは安倍の血筋のである者のみが持つことのできる、天狐の力が形を成した武器を指す。
この『剣』の形・能力は個人で異なっており、またそれを指す名もそれぞれである。
例えば、成親なら大剣と呼ぶに相応しい、刀身の部分が幅広の片刃の剣であるし、昌親ならば細身の刀である。
実はこの『剣』、神・人・魔関係なく、その対象物を斬ることができる。その刃が傷をつけないのは、その刃の持ち主である当人のみである。
無論、この『剣』で虚を斬ることができる。余程のことがない限り、自ら虚を討とうとはしない安倍の者達であるが、必要に迫ればこの『剣』を振るって虚を討つのである。

己の『剣』――灯籠花を呼び出した昌浩は、灯籠花を介して意識を薄く広げていく。


(人、並びに神魔の波動を削除。検索対象を虚に限定――――・・・・・・・・・!いた!!)


虚の気配を探っていた昌浩は、先刻倒したばかりの虚と同種の虚の存在を探り当てた。
閉じていた眼をぱっと開き、その存在を探り当てた方角へと視線を馳せる。

そんな昌浩の反応に気づいた一護達も、同様にそちらの方角へと視線を向けた。


「あっちに例の虚がいるのか?」

「うん、そんなに離れてないよ」

「だが、腑に落ちんな。虚がいるというのに、何故連絡が入らんのだ?」

「んなこと知るか!ぶっ壊れてんじゃねーのか、それ」


一護はルキアの手の中にある伝令神機を胡乱げに見遣る。
と、次の瞬間


ピリリリリッ!


「おわぁっ!?」

「鳴ったね・・・・・」

「鳴ったな・・・・・」

「っと、ここでこうして呆けている場合ではないぞ!一護、昌浩!直ぐに現場に向かうぞ!!」

「う、うん!」


ルキアの叱責の声に促され、昌浩達は虚がいるであろうそこへ向かって駆け出したのであった―――――。







                        *    *    *







一方、五年前組みの方はというと、こちらも粗方の事情説明を終えた後、件の虚を発見したために追っている最中であった。


「くそっ!何でこっちを見ただけで逃げ出すんだよ?!」

「そんなことは私にもわからぬ!一護、貴様の顔がしかめっ面で恐ろしいから逃げ出したんではないのか?!」

「はぁっ?!んなの、あっちの方が何倍も凶悪な面構えをしてるじゃねーか!変な言いがかりをつけるんじゃねー!!」


ぎゃいぎゃいとお互いに喚き合いつつも前を走る一護とルキアを、昌浩達は若干呆れた面持ちで眺め遣っていた。


「何か、よゆうそうだね・・・・・・」

「あれはあまりにも激しく喚き合っているために、現状を忘れ去っているように俺は見えるんだがな・・・・・」


いまだ止む兆しも見えない前方の遣り取りに、物の怪は思わず半眼になってそう言った。
一生懸命二人の後を追っている昌浩であったが、ふいにあることを思いついてぱちりと瞬きをした。


「もっくん・・・・・思ったんだけどさ、逃げるんだったらその足を止めちゃえばいいんじゃないのかな?」

「・・・・・・・・・・・・・・確かに、そうだな」

「だったらおれが足止めをして、お兄さん達にがホロウを倒せば・・・・・・・」


何やら一人でぶつぶつと呟きを漏らしていた昌浩は、決意したかのように一つ頷くと、前方を走る二人の死神へと声をかけた。


「おにーさーん!おねーさーん!おれがホロウを足止めするからっ、その間にホロウを倒して!」

「!わかった!足止め、頼んだぞ!!」

「うん!任せて!!」


昌浩は一護の言葉に元気良く返事を返すと、足止めのための真言を唱え始めた。


その行く先は我知らず、足をとどめよ、アビラウンケン!!」


鋭く放たれた声と共に、前方を走っていた虚の動きがぴたりと完全停止する。

その隙を逃がすことなく、一護は斬魄刀で虚に斬りかかる。
虚は昌浩の術のせいで避けることなどできず、実にあっけなく消え去っていった――――――。







                       *    *    *







―――そして五年後組み。

こちらも虚との戦いに突入していた。


「はっ!」


昌浩が鋭い呼気と共に、己の得物である灯篭花を袈裟懸けに振り下ろす。
紅の残像を引きながら、その刃はその命を奪おうと虚へ迫る。
しかし、その刃を虚は後ろへ後退ることによって、辛うじて避けることに成功した。が、昌浩はそこで諦めることなく更に一歩、虚の懐へと深く踏み込んだ。
虚へ肉薄すると共に、たった今振り抜いた刃を今度は下段から上段へと斬り上げた。そしてその刃は虚の腕を捉え、肩の部分から容赦なく斬り離した。
耳障りな虚の絶叫が空気をビリビリと振動させる。

虚は断たれた腕もそのままに、昌浩の前より我武者羅に逃げ出した。


「一護!そっちへ向かったぞ!!」

「あぁ!わかってる!!」


一護は己の方へと向かってくる虚に対し、静かに斬魄刀を構えた。


『オオオォオオオオオッ!!!』

「全く、往生際がわりぃんだよ!!」


ザンッ・・・・・・。

一護の斬魄刀は、虚を綺麗に真っ二つに裂いた。
虚は断末魔を上げる間もなく、塵へと還っていった。

それを確認した昌浩は、疲れたように息を吐いた。










「「はぁ、やっと終わった・・・・・・・・・・・・」」









五年前と五年後。
過去と未来で同時に同じ言葉を紡いだことを、昌浩と一護は知らなかった――――――。















※言い訳
終わった!若干、勇み足でお話が展開していった気がしますが、前編後編で終わらせるにはこれくらい詰め込まないと終わりそうにありませんでした;;

さて、今回は昌浩の『剣』がお話中に出てきました。
これはネタ語りにも書いてありますが、斬魄刀ではないけれど、機能として斬魄刀とほとんど変わりがない刀(結局剣になっちゃったけど・・・・)となります。まぁ、わかりやすく纏めますと



名前:灯籠花〈とうろうばな〉

能力:索敵(敵または目標物の気配や現在位置を探る(BLEACHでいう霊絡に似通ってるかも?))。存在の判別は各個体の有している波動の質によって振り分けられる。
   それ以外にも能力がある・・・・・かもしれない。

形状:青銅剣のような平造りの両刃剣。色は臙脂。

その他特徴:剣として呼び出す際には、特定の詩を詠唱しなくてはならない。この剣の場合は『汝、天つ空に咲き誇る紅き華。花開き舞い散れ――灯籠花(名前込み)』である。

持ち主:安倍昌浩



・・・・・・。何か、RPGの武器紹介文のようになってしまいましたね;;まぁ、深くは突っ込まないでください。

色々とわかり難い文章だったかとは思いますが、そこはクロス作品。しかもかなり捏造度の高いものであるということで納得してください。お願いします・・・・。

そしてこのお話はフリー配布ですので、気に入りましたらどうぞご自由にお持ち帰りください。


2008/5/15