花と花弁。









今は違った存在は各々に別の考えを持つようになる。









しかし、異なったものになろうとも考えることは―――願うことは同じ。









心安らかであることを・・・・・・・・ただそれだけなのだ――――――――。
















水鏡に響く鎮魂歌―拾碌―















水鏡に映った”昌浩”は困惑の眼差しを昌浩に向けた。


「昌浩?・・・・・・・・・・どうして、昌浩がそんな所にいるの?」

「・・・・え・・あ、寛匡・・・・・・・なのか?」


水面に映っている昌浩―――その格好をよく見てみると、髪を結っている位置が違うと言うことに気づいた。
昌浩の問い掛けに、寛匡は一つ頷いて肯定する。


「そうだよ。・・・・・・ところで、どうしてそんなところにいるの?」

「え?・・・・・・んーと、俺も何でここにいるのかよくわかんない。―――寛匡はここがどこだかわかるの?」


何故そこにいるかと聞かれても、昌浩自身どうしてこんなところにいるのかわからない。逆にこちらが聞き返したいくらいなのだ。
とりあえず、現状確認のためにもここがどこなのか知っておいた方がいいだろう。


「うん、一応。昌浩が今いるところは爛覇が作り出した空間なんだ。――――そこは、っていうかその泉?それは空間の繋がり・・・・・まぁ、出入り口って言った方がわかりやすいかな?」


そういえば、先程会った男の人がそんなことを言っていたような気がする。
ということは、寛匡の言う”爛覇”というのがあの男の名前になるのだろうか・・・・・・・・。
昌浩は今聞いたばかりのことを頭の中で整理する。


「・・・・・えーと、つまりはこの泉はどこかに繋がってるってこと?」

「そ。ちなみにこの泉は俺がいるここに繋がってるから」


寛匡はそう言って自分の足下を指差す。


「”ここ”って寛匡が今いるところ?」

「うん。この泉はこことそっちを行き来できるようになってるわけ。・・・・・昌浩がそこにいるってことは、爛覇が呼び寄せたのかな?」

「あー・・・・・確かそんなことを言ってた気が・・・・・・・・・・・・・」

「なんだ、もう爛覇に会ったの?―――だったらなんでこんなところに昌浩がいるの?爛覇がちゃんと帰さないはずがないし・・・・・・・・・」


昌浩がすでに爛覇に会った後だということに、寛匡は困惑の視線を向ける。
爛覇のことだから用件が終われば昌浩の魂をさっさと帰すだろう。昌浩の魂を悪戯にこの空間に止めておくことなどそんなまねはしないはずだ。
では、何故昌浩は未だにこのようなところをうろついているのか。
疑問はその一点に絞られる。

寛匡の問いに昌浩は視線を宙に彷徨わせる。
その様子は、言葉を慎重に選び取っているように見える。


「えーと、上手くは言えないんだけど・・・・・・・爛覇さんだっけ?多分、俺のこと帰そうと―――いや、帰したと思ってるんだと思う。なんかその帰る途中で道を外れたっていうか・・・・・何て言えばいいんだろう?とにかく、気づいたら帰り方がわからなくなってた・・・・・・・・・」

「ん〜、いまいち意味が分からないけど・・・・・・・とにかく、体に戻る方法がわからないんだね?」

「簡単に言えばそういうことかな?」

「う〜ん、昌浩の体から魂を抜き取ったのは僕じゃないから、元に戻す方法なんてわからないしなぁ・・・・・・」


寛匡は困ったように言う。
それに対し、昌浩も困ったような顔をする。
困った顔をして、お互いに水面を挟んで見つめ合う。
そうしていると、髪型の違いさえ除けば、正に鏡を挟んで対峙しているかのようにそっくりだ。


と、ふいに昌浩の耳を微かな音が掠める。


「――――え?」

「ん?どうしたの?」


昌浩が微かに漏らした声を聞き取り、寛匡は下げていた視線を上げて昌浩に問い掛ける。
昌浩の方はというと、微かに聞こえてくる声をよく聞き取ろうと必死に耳を傾けている。


―――っ!・・・・・・さ・・・・・ろ!・・・・・・まさ・・・・・・ろ・・・・・・・・・・・・・!!


「―――呼んでる」

「え?」

「・・・・・・誰かは・・・・・わからないけど、呼び声が聞こえる・・・・・・・・・」


昌浩は声の聞こえてくる方向へ視線を向ける。
とても悲痛な、それでいて必死な声が自分を呼んでいる。

その言葉を聞いた寛匡はしばらく思案した後、納得がいったように破願した。


「昌浩。その声に向かって歩いていけば、きっと帰ることができるよ」

「―――?そうなの??」

「多分ね。その声は昌浩の魂をちゃんと体に導いてくれるよ」


不思議そうに聞いてくる昌浩に、にっこりと笑ってそう言う。
確証はないが、その声は昌浩の帰りを待っている者の声だろう。
ならばその声に向かっていけば自ずとあるべき場所へ帰ることができるだろう。
そう昌浩に言ってやると、昌浩は数度瞬きをした後


「やっぱ心配掛けてるんだろうなぁ・・・・・・・」


困り顔でそうぽつりと呟いた。


「だったら、さっさと帰って安心させたら?」

「うん・・・・・・そうだね」


寛匡の言葉に、昌浩は笑って答えた。
寛匡は昌浩はすぐにこの場を去ると思ったのだが、予想に反してすぐには立ち去らなかった。
何か物言いたげにこちらを見てくる。


「・・・・・どうしたの?早く帰りなよ」

「あ、うん・・・・・・。えっと、怪我・・・・・大丈夫?」

「・・・・・ぇ・・・・・?」


昌浩から唐突に問われた内容に、寛匡は驚きに眼をぱちくりさせる。
あまりにも意外というか、予想外というか・・・・・・。


「治った、とは言えないけど傷口は塞がったよ。・・・・・・昌浩・・・・・・それって、普通敵に対して聞く?」

「え・・・・敵にっていうか・・・・・・・なんか寛匡はそんな感じがしないんだよなぁ・・・・・・」

「そんな感じがしないって・・・・・・・・俺は紛れもなく昌浩の敵なんだけど・・・・・・・・」


昌浩の言葉に、寛匡は酷く戸惑っている様子で聞き返す。
昌浩はそんな寛匡に、困った様な・・・・・・何ともいえない微妙な表情をする。


「なんていうか・・・・・一言ですぱっと言い切れないんだよね。ただ敵対してるっていうよりも、何かわけがあって敵対してるっていう方がしっくりくるんだよね・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・ははっ!とんだお人よしだね・・・・・そんなこと言うの、昌浩位だよ?」

「どうせ俺はお人よしだよ!・・・・まぁ、無事ならそれでいいや。・・・・・・・それじゃあ、行くね」

「・・・・・・うん、またね?昌浩」

「うん、また」


昌浩はそう短く返すと、泉から離れ、声のする方へ駆けて行った。
一度も振り返らずに――――。

そんな昌浩の後ろ姿を見えなくなるまで寛匡は見送っていた。
いずれまた会うときが来る・・・・・・・。
それが二人の間で言葉を交わさずとも感じ取ったことだ。
昌浩もきっと自分と同じように感じただろう。
何故か、そう確信めいたことを思った。



そして寛匡は静かに目を閉じる。






今はこの傷を治すのみ―――――――。














道を失くし、彷徨っていた魂はあるべきところに帰る。















水鏡の向こうにいる魂は闇の中でただひたすらに祈るだけ―――――――。


















                      

※言い訳
うあ〜、難産だった。というかこの話書く意味あった?ないよね???
昌浩と寛匡の会話・・・・・。なんでこの二人仲良く会話なんかしてるんだろ?あれ?
書いてて意味がわからなくなりました;;(ヲイ!!)
こんな雑文でほんっとうに申し訳ありません!!!次回は必ずやきちんと筋の通った文章を―――書けるかな・・・・・・・・?精進します。

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2006/2/20