己が己らしくなくなったのはいつからだろうか?









最早己らしさとは何だったかもあやふやで









明確な像を捉えることは出来ない。









漆黒と同化していく――――――――。
















水鏡に響く鎮魂歌―参拾―

















自分は一体何をしているのだろう?




視界が黒に覆われた状態でそう疑問を浮かべる。






熱が一切感じられない無機質な闇。

空気が振動することのない空虚な闇。






そんな空間に己の心は何をするでもなく漂っていた。






視界が全く利かない闇の中にひかれた一本の道。

光の届かない世界で唯一わかるもの。

その道しか見出せないのでその道を歩くしかなかった。






本当は沢山に枝分かれした道があったのだろう。

行く先の―――指し示す先が異なった道が沢山数多にあったのだろう。






しかしその道を見つけ出すことはできない。

闇に隠れてしまっているから。

闇が隠してしまっているから。






本当はこんな道など歩きたくはない。

望まぬ道。

それを何かに急かされるように歩いた。






漣が広がる心。






漆黒の薄い紗を間に挟んで向こう側を覗く。

不明瞭な視界。

不明瞭な思考。

見えない何かに縛られ、目隠しをさせられた心。






己自身が思い通りにならない。






呼ぶ名はあるが、呼ぶ声はない。

呼ぶ名はあるが、名の主はいない。






果てしなく拡大していく闇。

端のない檻。

形無き透明の牢。






何処へ行く?

何処に行く?






螺旋の道。

終着点はあるのだろうか?






手放された光。

手放した光。

手放したくなかった光。






迫ってくる闇。

迫ってきた闇。

迫ってこようとする闇。






失いたくない。

失いたくもない。

己が己であるということを。

己が己であり続けることを。






ただそれだけ。

たったそれだけ。






今一度、道を照らす光をください。

どんなに微弱でもいいから。






こんな所に留まっていたくない。

こんな所に捕まっていたくない。






絡みつく闇を必死に振り払う。






朧などではなく真実を。

夢ではなく現を。






一条の光が闇を裂く。






虚構を振り払い駆け出す。














瑞斗――――!


















光の先へと手を伸ばす。























                        

※言い訳
何故か独白文。あれ?何で独白文??
書く予定が全くなかったものを書いてしまいました・・・・・・・。
本当は独白をちょこっと入れて、本文を書いて参拾話。そして最終話のはずだったのに;;思っていたよりも独白文がかなり延びてしまったので、このお話はこれで一話扱いにしました。
予定外だった・・・・・・・・・。
あ、ちなみに台詞のところは反転すれば読むことができます。

感想などお聞かせください→掲示板

2006/4/28