警告)流血、死ネタ注意!!・・・いえ、流血シーンは今まで何度か書いてますけど、今回は色々とやりすぎてしまったのでは?と少し反省しているので念のため注意書きとして書いておきます。(まぁ、私の書く流血シーンなんて高が知れていると思いますが・・・)そういったシーンが苦手な方はUターンして下さい。

















飛び散る紅。







滴る生命の雫。







目の前に広がる光景、







それをただ、呆然と見つめるしかなかった―――――――。















沈滞の消光を呼び覚ませ拾参〜















「煌(こう)よ・・・・・」

「何?久嶺(くりょう)」


依然として臨戦態勢のまま、煌は意識のみを九尾へと向けた。
己へと意識が向けられていることを確認した九尾は、うっそりとその口元に笑みを浮かべた。


「そろそろ頃合だ。――準備は良いな?」

「!・・・・・了解。ほんと、気に入らないけどね・・・・・・」


九尾の言葉に些か不機嫌そうな顔をしつつ、煌は不知火を構えた。
そんな煌を見て、九尾はくすりと小さく笑みを零すと徐に手を持ち上げた。
ゆらり・・・と濃厚な妖気が立ち上り、蒼き炎はまるで蛍火のように舞った。

九尾と煌の臨戦体勢を見て、晴明達もそれに合わせて身構える。


「まさひ・・・・」

「黙れっ!俺はお前達が求めている昌浩じゃないと散々言っているだろう!!!!」


紅蓮の呼び掛けの声を途中で遮り、煌は妖力を込めた気の刃を飛ばす。
己へと向かってくる刃を避けつつも、紅蓮はその視線を煌から僅かたりとも逸らさなかった。


「わかっている。・・・だが、それでもお前に帰ってきて欲しいと俺は思っている・・・・・」

「っ!!俺の帰る場所は・・・久嶺の傍だけだ!!!」


己へと差し出された手を、煌は妖気を爆発させることで薙ぎ払う。

いらない。
己が唯一と定めた銀色以外の手など、自分には絶対にいらないっっっ!!!



             
本 当 に ?



くわりっ!と、煌はその琥珀の眼をこれでもかと言わんばかりに見開いた。


「久嶺の傍以外、俺が俺足りえる場所などありはしないっ!!!」


煌の咆哮ともとれる叫び声に合わせて、不知火の刃が今までの中で最も多く、鋭く、そして強力なものが放たれた。

加減と遠慮という言葉を置き去りにしたその刃は、構えの姿勢を取っていたにも関らずに晴明達を容赦無く切り裂いた。
無論、晴明達とて大人しく切り裂かれるつもりはないので、全力で襲い来る刃の迎撃にあたった。
にも関らず、全ての刃を防ぎきることができずにそれぞれが決して浅くは無い傷を負った。
ただし、その傷と引き換えに己が主達に怪我一つたりとも負わせなかったが・・・・。

それぞれの主が無事であることを確認し、神将・夜叉大将達は胸の内でほっと安堵の息を吐く。
が、それも間を置かずに放たれた玲瓏な声によって再び凍りつくことになった。


「ぬるいな。安堵するにはまだ早いぞ?神の眷属共」


はっと、その場にいた全員の視線がたった今言葉を放った主――九尾へと集う。
その瞬間を待っていたと言わんばかりに、九尾は溜めていた己が妖気を惜しみなく解き放った。
雪崩と見紛うばかりの蒼炎の大瀑布が晴明達へと襲い掛かる。
今までの攻撃が児戯に等しいと思わずにはいられないその攻撃に、晴明達は守りに全力を注いだ。

瞬時に結界を張り巡らせた晴明達を、九尾の放った蒼炎が津波の如く怒涛の勢いで襲った。


「くっ!!」

「な、なんて力なの!?」


必死に障壁を築く晴明達は、その圧倒的なまでの力に閉口するしかなかった。
時間としてはそう長くも無い・・・しかし受ける側としては途方もなく長く感じられた攻撃は、やがで徐々に勢いを緩めて・・・・途切れた。
後に残ったのは憔悴の色を濃くした晴明達の姿であった―――。


「ふふっ!情けないのぅ・・・。人間の晴明ならいざ知らず、神の眷属たる貴様らがその体たらくとは・・・・神も大したことはないな」

「なんだとっ!!」


嘲りの笑みを浮かべる九尾に、神将・大将達は怒りをその瞳に浮かべた。
怒りにつられてか、彼らの身体より立ち上る神気の強さがいや増した。
そんな彼らの姿を見ても、九尾はその余裕の笑みを崩さなかった。寧ろその嘲笑をより一層深いものとした。


「この程度の戯言で心を乱すとは・・・誠に浅慮だな」


そして、視野も狭い。

くすくすと笑い声さえ漏らし始めた九尾を、晴明達は困惑を含めた眼差しで見遣った。
笑い声につられてか、徐々に焦燥にも似たざわめきが静かに胸の中に広がっていく。
何だ。一体何を見落としている??

その解は、すぐさま彼らの前に突きつけられた。


「本当にね。一つのことに気を取られれば、他の事を忘れちゃうみたいだね」


不意に響く煌の声。

煌は九尾へと歩み寄る。


もう一つ、人影を引き連れて――――。


『!彰子姫(様)っ!!!』


そう、煌に引き連れられている人影の正体は彰子であった。
それを見た晴明達は、ざっと顔から血の気を失わせた。
いくら九尾より猛攻を受けたとはいえ、一瞬でもその存在から眼を離してしまったことに後悔する。


「・・・あ、彰子姫をどうするつもりなの?!!」


震える声で、太陰が煌へと言葉を投げ掛ける。
煌はそんな太陰の問いかけにうっそりと目を眇めると、徐に腕を動かした。


「ひっ!」

「なっ!」

「・・・・・・え?」


太陰は思わず短い悲鳴を上げ、それ以外の者達は驚きの声を上げる。そして彰子は短く疑問の声を上げた。


ひやり。


冷たい刃の感触が、彰子の首筋に突きつけられた。

九尾と煌以外の、その場にいた全員の視線が彰子の首へと・・・厳密に言えばその首へと突きつけられている白銀の刃へと注がれた。
誰もが皆、驚きに目を瞠っていた。

刃を突きつけているのは煌。
刃を突きつけられているのは彰子。

誰もがこの予想もしなかった展開に呆然とした。
そしてそれは致命的な隙でもあった。


「縛っ!!!」


煌から鋭く放たれた言霊が、晴明達全員の身動きを瞬時に封殺した。
完全に不意を突かれた形の晴明達は、成す術も無くその縛鎖に身動きを止められた。


「煌っ!?一体何を・・・・」

「うるさい!!お前達のその声がっ!視線がっ!鬱陶しいんだよ!!『煌』と名を呼びつつ、やっぱり昌浩しか見てないお前達なんか俺にはいらないんだ!!」

「っ、そんなこと・・・」

「ないって言えるかな?これから俺がすることを見て・・・・」


否定の言葉を煌は途中で遮り、煌は見惚れるほど綺麗に・・・そして禍々しく笑んだ。


そして次の瞬間――――













                    
ざしゅっ!!!












その白銀の刃を、容赦無く彰子の首筋へと――――滑らせた。


「―――――っ・・・・・・」


彰子は絶鳴を上げる暇も無く、そして晴明達は煌の行動を止める暇も無く、その刃は振るわれた。
刃の過ぎ去った首筋からは、間を空けずに勢い良く『赤』が噴出した。
止める間もなく『赤』は勢い良く辺り一体に撒き散らされた。

びゅっ!びゅっ!と心臓の拍動に合わせて熱き水が彰子の首より滴り落ちる中、煌は彰子を支えていたその手を離した。

どさり・・・・。

煌という支えを失った彰子の身体は、重力に従って地へと倒れ込んだ。
身体が地へと倒れ込む最中も、そして倒れた後も『赤』は勢い良く零れ続け、あっという間に大きな水溜りを生み出した。

その光景を、晴明達は血の気の失せた顔で、唇を震わせたまま愕然と見つめていた。
水溜りに沈む彰子を見つめ、その黒曜の瞳が濁りきっているのを見て、漸くそこで彼女が絶命していることを彼らは受け入れた。


「い、いやあぁぁああぁぁぁぁぁぁっ!!!」


上げられた悲鳴は誰のものか。
いまだ追いつかぬ思考を必死に働かせながら、彼らはゆっくりとこの惨状を作り出した人物へと視線を向けた。
そしてまた絶句する。


「ふっ、ふふっ!はは・・・
あははははっはははははははははっ!!!


煌は嗤っていた。それはもう、心底愉しくて仕方ないというほどに・・・・・・。

返り血であろう大量の鮮血に、その銀糸を『赤』く染め上げて。
ぽたり、ぽたりと・・・・毛先より『赤』が滴り落ちる。

そんな煌の姿を見て、晴明達は完全に凍り付いていた。
自分達が見知っている子どもの姿と、あまりにもかけ離れているその姿に――――。




「どう?こんな俺を見て、まだ『俺』を取り返したいって・・・・・そう言える?」


言えるものなら言ってみてよ。







「こ・・・・煌ぉ―――――っ!!!!!!」







絶望に震える叫びが、空間を振動させた。






後に響くは、子どもの無邪気なまでの嗤い声であった―――――――。











                        

※言い訳
どうも、お久しぶりです・・・。半年以上も更新停滞させて本当に申し訳ありませんでした・・・・。
ほんともう、色々とすみません;;復活早々とんでもない話書いてしまい、土下座して謝っても足りないくらいです。
いえ、もとからこのシーンは書くつもりだったんですけど、かなりやりすぎてしまった感がヒシヒシ!と;;
もう、書いている本人すら収拾がつかなくなっていたり・・・・あぁっ!自分でもよぉーくわかってるんで、石投げないでください!!
でも、これはどうしても必要なシーンだったので、彰子ファンの方申し訳ありませんでした!!

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2009/8/15