「コウヤ、お誕生日おめでとう。って言っても数日早いがな…これはお前にプレゼントだ!」
8歳の誕生日。
それよりも数日早い日付のその日、滅多に家に帰ってこない父が突然現れて僕に手渡したのは―――白い、ポケモンのたまご。
「父さん…これ……」
「!あなた、これポケモンのたまごじゃない!一体どうしたの?」
「旅の途中、偶然に手に入ってな。そろそろコウヤの誕生日なのを思い出して、プレゼントとして贈ろうと思ったから今回は戻ってきたんだ」
父さんはそう言ってニカリと笑うと、「どうだ、驚いたか?」と聞いてきた。 もちろん、不意打ちのプレゼントに驚かないはずもなく、僕は「うん!!」と大きく頷いたことを今でも覚えている。
柔らかい素材の布が敷き詰められたカゴの真ん中にちょこんと乗せられている白いたまごは、時折ゆらゆらと揺れ動くことがあった。それを不思議に思って父さんに尋ねてみると、それはポケモンがたまごから孵る時期が近い証拠なのだと教えてくれた。
「かなり活発に動くようになったからな、数日中にはたまごからポケモンの赤ちゃんが生まれるぞ!」
「あら、そうなの?だとしたら、コウヤの誕生日とこの子が生まれてくる日が重なったりしたら素敵ね」
だったら一緒のお誕生日になるでしょ?と、母さんは楽しそうに話していた。 僕はそんな母さんの言葉に胸を躍らせつつ、そうであったらいいなと思った。
そう、これが僕――コウヤと、後になってシセンと名づけられるピチュー(のたまご)との初めての出会いだった―――。
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